揺らぐ幻影

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今朝見た長方形の中には、国民の八割が毎朝必要とする情報が詰まっていた。

最高気温や最低気温が示された天気図は、簡素化された日本の形。

まだ週間予報でバレンタインの天候を知ることができない。


彼の気持ちが自分に何パーセント、二人のラブラブ指数、……なんて恋愛の予報をお願いしたいくらいだ。


うっかり先日は寝坊したが、身体のリズムはすっかり遅寝早起きに慣れてきたと思う。

ある意味健康的と言えるのではないだろうか。


  ねむーい

  眠り姫になりたいーでも王子が来ないー

奇跡の愛を成せる童話の中のプリンセスに嫉妬を通り越して尊敬をしながら、

結衣は早く十四日になれと祈ったり、

ずっと十四日にならないでと願ったり、

でも十四日にチョコを渡したいと企んだりもした。


  ……バレンタイン

教室の雰囲気がクリスマス前と同様に浮足立っているように感じられる。

バレンタインにテンションが上がらない人は論外だと言われるE組は、

高校生の割にやはりノリが幼いが、結衣はそこを気に入っている。


机にだらしなく全体重を乗せる少女の様子から、

立ち振る舞いに気をつけようと決意した記憶が抜け落ちていることが明白だった。

興味がないことのみ抜け落ちる性格はメリットとデメリットどちらが勝るのだろうか。


生徒の数だけある机。すなわち生徒仕立ての机。もしかするとオーダーメイドな机。

学校の机は生徒のサイズに合ってないのでは、といった疑問が以前からクラスメートたちの間にある。

ムードメーカーの男子いわく、最近の子供は手足が長いので、

昔ながらのままではどうにも膝が窮屈で、もどかしいったらない。

足を組むことも困難だ。
後数センチでもいいから、脚を伸ばしてくれたらどんなに楽だろう。

学生は皆、勉強に集中できるだろうに。

標準体型に見合ったものを使用したいものだ――という意味不明な発言に結衣は大賛成だ。

ろくにノートもとらないのに不満だけは一人前に持つのが、彼女らしさである。


  もっと話したい

  メールより話す方が好き

  ねむ

途端にこれから授業を受けるのが面倒になる。