《ハテナ打ちすぎ笑。小一、身内目線で可愛い。お姉ちゃん何歳? 似てる?》
《いいな弟欲しかった。二八、似てない、お姉ちゃん市井くん並に目デカイ》
風邪の時に無性に食べたくなる桃缶。
恋の病に侵された結衣は、まるで缶詰の中に密封されてしまった気分だ。
甘くてとろけて、柔らかくて魅了する。
嫌われてないよね?
本当に嫌いならメールしないよね?
最低ラインの“フツー”ではあるよね?
……大丈夫だよね?
結衣とのメールが億劫ならば、やりとりが続く疑問文は打たないだろうし、
結衣に興味がないならば、姉に対してノータッチのはずだ。
そうやって一つ一つ確認して、強くなれる。
すると不思議なもので頑張ろうと思える。
ロマンチック乙女に水を差すようで悪いのだが、このような『彼の言動チェック作業』、
実はてんであてにならない。
なぜなら自ら好都合な判断を導いているのだ。
客観的なんて名ばかり、自分の主観でしかないことを、やはりビギナーな少女は気付けない。
頑張ろ
近藤の言葉で濃度を増すシロップに漬けられて、いっそ彼に食べられるなら幸せだ。
一缶百円でも安売り七十九円でもいい、幸せに値段なんてない。
幸せは目に見えないし、幸せが何かと聞かれたらあやふやで、
だから、近藤の手で、彼の言葉で教えてほしい。
そんな風に想われることを、どうか嫌がられる女でありませんように。
ピカピカ光るライトは手の平の星だ。
《うちの弟さん駄々っ子だから譲る笑。お姉ちゃん普通に大人か。てか田上さん目でかくね? それよりデカイとかお姉ちゃん顔の半分以上目玉、ホラー笑。おやすみ》
近藤が自分にメールを紡ぐなら、無料で幸せになれるのが結衣だ。
きっと彼は知らない。
おやすみの後にある星の絵文字一つを夜空を駆ける流れ星に見立て、
恋愛成就を祈る女の子が居ることを。
ドキドキする心臓にそっと右手を乗せた。
カーテンを広げても黒い天井に駆け足の煌めきはない。
コンビニの看板の上辺だけ切り取れば、幻想的なオーロラに見えなくもない。
強引に洗脳すれば、明日へ繋がる月夜は美しいのかもしれない。
…‥



