揺らぐ幻影


照明により、香りを閉じ込める瓶がキラキラ光る。

カーブやカッティング、蝶々やフルーツといったモチーフは、

女の子のツボを理解しているデザインが可愛く、眺めているだけで癒されるため、

部屋のオブジェにと、結衣はついついボトル目当てに香水を集めてしまう。


なぜ女は光り物が好きなのか。

子供向け変身玩具、ロットやコンパクトも絶対にピカピカしているし、

歳を重ねると宝石に行き着くらしい。


《弟似てる? 私お姉ちゃん居る》

貰った情報に食いついて、さりげなく自己紹介を混ぜるのは里緒菜からの教えだ。

質問をされていないのに、結衣は自分について知ってもらおうと姉がいることを自己申告した。


誰がジャッジするかは不明だけれど、

最初に比べ、やはり手慣れてきたと評価されよう。


  いいな

  弟欲しかった

近藤の幼い頃を想像するだけでドキドキする。

そう、恋をした女子高生はキラキラ瞳が輝くから、やっぱり光り物が好きなのだ。


早く返事が読みたくて、何度も新着メールを問い合わせれば、ようやくランプが点滅する。

好きな色を聞かれたら、ピンクと答えると見せかけて、実は煉瓦色だ。


《激似、寄り目。あやすん上手そうで子供に絶大な人気ぽいからお姉さんって思ってた笑。妹は意外》

文字を目で追った瞬間、真っ白なテーブルクロスにいちご味のかき氷シロップを撒き散らしたかのように、

雪を思わせる少女の肌が季節外れに染まった。


  あーダメ、わざと?

  無駄にときめかす、やだー

特別な人の言葉には奥義が生まれる。

口が上手く異性を喜ばすツボを知っている彼は慣れているのだろうか。


嬉しかった。
歌のお姉さんのように、小さな子に好かれるイメージを持たれていることは、誰だって嬉しい。

間接的に、近藤の中で自分の好感度が高いと言われているような気がして嬉しい。

たかが数行、意図を探るなど馬鹿げているけれど止められない。


わざと口説き文句を挟んで、からかっているのだろうか。

だとすればこれ以上恋心を揺らがさないでほしい。
耐震性がないから今にも壊れてしまう。

片思い中の女子は異常に深読みをする厄介な生き物だ。