揺らぐ幻影


等間隔に整列された机に座る生徒は、見た目だけでは何も分からない。

格好良い上に帰国子女な質実剛健くん、本人はイケてると思っているイキがった勘違いサマ、

頭が良いけど臨機応変さがない堅物さん、サボり魔だけど愉快痛快ムードメーカーちゃん、

色んなキャラが詰まっているE組の本当なんて誰も知らない。


見た目はおっとり可憐なのに中身は正反対、割とツッコミ気質な少女――田上結衣。

担任に遅刻申請書を渡し、通り道の生徒へおざなりな挨拶を済ませ、直ぐさまメールを送る。


《職員室。ぽこりん会ったし》

里緒菜からは《デステニー笑》と、愛美からは《今日牡羊座最下位だったのに笑》ときた。

こんな二人が好きだ。

『おめでとう』や『良かったね』といった感動モンの友情を見せつけられるよりも、

遠回しに笑いで褒めてくれるユルさが好きだ。

絵文字なんか付けない簡素な文章が似合う二人が好きだ。


職員室の乱を反芻し、にやにやしながら頭を振ると遅れて毛先がふわりと視界を踊って――

  ……、あ。

本日はストレートヘアだと気が付く。

いかなる時でもお化粧は完璧にこなしているのでお顔は問題ないが、

寝坊をしたので、髪の毛など櫛で適当に梳いただけではないか。


せっかく近藤と史上最強の近距離を達成したのにと、

さっきまでの花咲き誇る浮かれモードが嘘のよう、萎れるどころか茎を折る。

  やっぱ牡羊座は最下位

  最悪最低

  遅刻するし変な髪だし変な笑い方したし

星占いなんて信じない癖にバリバリ鵜呑みにしてしまう不思議。

首の骨が無くなったみたいに、だらりと前に垂らした視界は後悔で滲む。


  せっかく会えたのに、髪……

  巻いときたかった

  最悪最悪最悪

すっかり気落ちした結衣は、痛いの痛いの飛んでいけと痛いことを唱えながら、

深い深いため息を前の席の背中に吐き出してやった。


誰かが寄附した雑誌の付録の安っぽいカレンダーは二月を飾る。

あと数日後にはいよいよバレンタインで、十四日が何だというのだろうか。

七の倍数、素数とか約数とか自然数とか、もう記憶にはない。

結衣にとって十四は恋の数字なだけだ。