笑顔可愛い
赤ちゃんが初めて笑ってくれた時の無条件の喜びは、こんな感じなのだろうか。
いちいちキュンキュン高鳴る胸は破損してしまわないのか不安になる。
狡いカッコイイ
異性の間での『変わっている』は、褒め言葉に値すると結衣は思う。
天然は少し狙い過ぎていて、不思議ちゃんはやや引いてしまう。
そんな時の変わっているは、イコール面白い、個性的というプラスの働きをする。
だからだろう、
「ほんまそれ、結衣と居ると笑いっぱなしだよ」
「結衣は飽きないから」
なんて、変わっているの意味を広げるために、
なかなか安っぽい台詞、白々しいヨイショをして愛美と里緒菜が補っていく。
もし青春恋戦が行われるならば、
彼女たちによる言葉の連携プレーは、アマチュアではなくプロだろう。
恐らく痛いランキングで優勝するはずに違いない。
その証拠だろうか、あまりに幼い友情らしさに、「あはは、三人ウケる」と市井が笑う。
どうして誰かが笑顔になると嬉しくなるのか。
すべて見透かしたような近藤の友人は、
「洋平は鈍いよ」と聞こえるか聞こえないような音量で零す。
――しかしながら、そんなヒントは現実の世界では無効でしかない。
そう、靴箱に集まる人物たちは揃ってマヌケであり、展開を読めないので、
都合良くピンと来る者は居ないし、誰も拾えやしない訳だ。
それが普通の女子高生の恋模様だ。
偶然奇遇作戦、自然に振る舞うことを前提にしているが、
第三者からすれば不自然な点が多々ある。
シャボン玉もだし、わざわざ面識がないのに辞書を借りに来たり、
アドレスを聞いたり、つまり市井からすればすべてが異常のようだ。
古典的な演出を違和感なくすんなりと受け入れる近藤は、
確かにその手のことに鈍感な人なのかもしれない。
本来は不可解な結衣の登場頻度の高さを疑問に思うだろうに。
おっとりした人、そんな言葉がぴったりだ。
「じゃあまた」
「うんっ、バイバイ」
手を振ったら、同じように手の平を左右に動かしてくれた。
以前は背中を眺めるだけだったけれど、小さくなる背は一度だけこちらを振り向いてくれた。



