赤は情熱の愛、橙は家庭的な温かみ、黄は穏やかな優しさ、
緑は癒される自然、青は切ない悲しみ、藍は大人の品格、
紫はミステリアスな魅力――せきとうおうりょくせいらんし。
結衣が思う虹色の光だ。
確か小学生の理科の時間に、ホースの水を空に放って習ったような気がする。
太陽の反対側に見られるとかプリズムとか、やたら四十二度と回答欄を埋めただけで、仕組みは覚えていない。
曖昧な記憶の輪郭が定まる予感はない。
それでも、近藤が幕ノ内弁当を食べていたことも、大丈夫と言ってくれたことも、
鮮明に覚えていられるのは何故。
勉強と恋愛は蓄積する場所が違うのだろうか。
透明の丸は虹色に煌めき、ふわふわ予測不可能な方向へと浮かぶ。
たどり着く場所は何処。
「ちょっと結衣ちゃん何それ」
「屋根まで行くの? ウケる」
「E組いいキャラしてんね」
離れでの授業が終わり、教室に戻ってくる服飾コースの女子生徒がすれ違い様に茶々をいれる。
服コの子は揃って明朗で、
このようにクラスの垣根なくコミュニケーションを図る点がまたオシャレな立ち振る舞いというかなんというか。
「有意義な遊びでしょ」と、笑いながら返す結衣は、
綺麗どころの彼女らと言葉を交わす時に緊張するのだけれど、
それは、女からしても見惚れてしまう程、モデル並に磨きがかかっているからだ。
ドキドキしてしまう。
ガールズバンドを組んでいる古着が可愛い三千子、DJをする姿が似合う攻めな静香、
が市井の次に選ばれしアトリエ利用者の二人をはじめ、
オシャレグループの彼女たちは、やはりアイデンティティが強いと思う。
比べて凹むのは簡単なのだから、逃げたくない。
劣等感なんて吹き飛ばせばいい。
ホッペを膨らまし息を吐き出すと、ぷかぷか現れるそれ。
灰色の空間に見つけた煉瓦色。虹にはない色。
「あー! 近藤くん!」
驚いた音色を奏で真ん丸に目を見開き、小走りで近寄れば完璧だ。
まるで仕込みはゼロの演技派結衣に、やらせ臭はない。
待ち伏せした素振りは見せず、再現VTRのナチュラル感を参考に、
「見てー、シャボン玉」とさえ言える自分が笑えた。



