被服室は言うまでもないが、ミシン等が置いてある作業をする場所で、
アトリエ室は選ばれし九人が、それぞれ二畳ほどの空間を自由に使うことが出来る場所で、
一年生は市井と女子二人らしい。
そしてシュミレーション室は服を飾る棚やハンガーコーナー、
試着室やバックヤード、会計台にもきちんとレジがあり、
正に本物の店舗そのもので、生徒が販売員とお客になり バーチャル接客業を身につける場所だ。
この特色が極めて個性的だと、
マドカ高校の服飾コースがとりわけ人気の理由でもある。
まだー?
今頃、近藤は服飾コースしか立ち入りが許されない塔で、夢中で勉強しているのだろう。
早く会いたい
特徴ある服飾コースは文系理系と分けた際、
明らかに将来ビジョンが明白で、時々自分がちっぽけに思える。
将来なんてまだ高一だから大丈夫だと、いまいち結衣は真面目に考えていないし、
こうして授業をサボることに対して後ろめたさは露ほどにない。
里緒菜や愛美は二年後の自分について決まっているのだろうか。
なんだかいつまでもお気楽な女子高生のままで居たいと思う。
ずっとずっと高校生をしていたい。恋愛と友人とアルバイトと趣味と家族と、そのくらいが楽しい。
傘から垂れた水が、すのこにしみを作っている。
雨に濡れるとたいていの物はトーンが下がるので、ますます暗い世界になる。
「美味しー、パティスリータガミユイ」
家族に絶賛された愛美と作ったチョコレートチーズケーキを試食してくれた里緒菜が、
普通に美味しいから本番余ったケーキを頂戴と、ハナマル採点をくれたので、
合計八人の舌を掴んだことになり、ますます結衣は自信がついた。
あんなに簡単なのに、少しオシャレな感じなのが嬉しい。
お料理は見た目に凝っても味がイマイチなら良くないと言われるが、
上手い下手は置いといて、やっぱり盛り付けのセンスは重要なのではないだろうか。
なぜなら、食べてくれる人に感謝をする努力が見た目にこだわりを出すと推測されるからだ。
瞳に美味しそうな魔法がかかる。
耳によく響くチャイムは呪文で、待ち人に会いたい乙女へとメルヘン変身を遂げる。



