レシピをアレンジしたが、実のところ味はどうなのだろう。
以前カスタードクリームを作る際に、分量を弄ったらすこぶる不味かった経験があるので少し怖い。
期待と不安を、
「「いただきます」」
ゆっくりと口に運んだ。
構造上たくさん夕日の光線が入るリビングは赤く染まり、
肌がお風呂上がりのように柔らかく色付く。
レースカーテン越しに情緒漂う茜色の空が広がっているのが見えた。
もうすぐ影が主役の世界に変わり、光が偉そうに我が我がと主張し始める。
ドキドキした。
商品開発部の人が新メニューを提案する時のような、
新妻が姑に初めて手料理を振る舞う時のような、隠し味は期待と不安だ。
うわっ
「美味しー」
「普通に成功じゃんか」
自然と口角が上がり唇が三日月型になる。
赤ちゃんの耳を甘噛みした時に似た歯ごたえ、舌に絡む濃厚な甘さはそれでいて軽く、
口内に纏わりつく香りは一級品だ。
「惚れる」
「自分に求婚したい」
パーフェクトな仕上がり、見た目も味も太鼓判で予行練習は無事成功に終わることとなった。
おいしい・まずいを判断するにあたって重要視される最低限のレベルはまずクリアしているはずだ。
きっと近藤も喜んでくれるに違いない。
改善点を挙げると、包丁の刃についた生地がカットする度に切り口に付くようなので、
本番は逐一クッキングペーパーで拭いた方がいいこと。
また、チョコチップ入りの方はダマになっていると勘違いされるかもしれないので、
無駄に手は加えずシンプルに作ることが正解だと分かった。
ぶっつけ本番はこのような点に気付けないため、大変ためになるのが予行練習だ。
愛美の親からお墨付き、自信も貰えた。
力強い風にお辞儀をする雑草を素通りし、
頑張ろうと決意を新たに刻んだ時、都合よく流れ星が光った気がして、結衣は夜空を仰ぎ見た。
けれども勘違いだったようで、高層ビルの航空障害灯しか見えない。
高い塔が密集し始めると切なくなるのは歳をとったせいなのか。
自然が感じられるよう地に足を付けて歩いていきたい。
そんなことを手前にある赤いランプに祈った。
…‥



