揺らぐ幻影


細々した雑貨は木目調の籠に布を被せて可愛く整頓されている。

自然体な雰囲気の店内がよく似合う店員さんたちは、

ロハス生活をしていそうなヘルシーメイクを心掛けている女性が多い。

豆乳や無農薬野菜、自家製ジャム等が好きそうな感じがするし、ベランダでハーブを育てているに違いない。

飾らない素敵な性格なのだろうと、結衣は勝手に憧れを抱く。


真四角のケーキをスティック型にカットしたものを、透明のシートでくるりと一周巻き、

シルバーのシールで止めようと、ラッピングのイメージしていたが、

実際に商品を前にすると目移りする。
あれもこれも可愛くて大変だ。


そんな中、女に生まれて良かったと壮大なことを大袈裟に思った。

女友達と過ごした青春時代を、いつかの将来子供に幸せだったと言える人になりたい。

そこに好きな彼が居てくれるなら、未来の今も幸せと言える母親になれているのだろう。


学校がない日曜日は近藤に会えない。
そう、明日隣に存在しない人を、なぜ未来の結衣だと自然に思い浮かべることができるのか。

今何を頑張れば明日会える女の子になれるのか誰か教えてほしい。


右手に左手、商品を漁る愛美のように逞しくなりたい。

「これが可愛い」
「ラブリー、たまお」

「これキュート」
「シンジくんじゃないし」

「これ愉快、ぽこりんぽい」
「ダイヤモンドじゃん」

わざと派手で露骨な品をあれこれ提案する愛美にダメ出しをして、

彼女を頼らず結衣は結衣で選ぶことにした。


これはこんな友情ごっこ。
勧められなかった方に近藤に合ったものが残されていることに、本人は気付けなかったけれど。


「いいね、初々しい」

懐かしむように投げかけられた言葉の通り、

三年目になる彼氏を持つ内面が優れた愛美のように、

三年後の彼女は大人らしい恋愛ができるようになるのだろうか。


バレンタインのプレゼント。
男子がラッピングを重要視しないことは承知の沙汰だけれど、やはり特別にこだわりたい。

結衣だけでなく愛美と里緒菜の気持ちも篭っていて、市井の応援もある。

好きな人が、近藤が、皆からの大切な気持ちを受けとってくれますようにと、

幸せの色に決めた。