揺らぐ幻影

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冬特有の木枯らしが寒々しさを増長するのと同様に、

出費がかさむ結衣のお財布の中も凍てつきすっからかんだった。


「えーっ、りおなちゃん!」

本日も朝イチで恋する乙女の悲鳴が鳴り響く。

むやみやたらに叫ぶのは女子高生の特徴と言えるのではないだろうか。


朝の会が始まる前の教室は、半数以上の生徒が宿題を写させてくれだの、

解き方を教えてくれだの吠えており、E組の始まりは変わらず騒々しい。

その雑音プラス、「感動ありがとー」なんて爆音が混ざれば、

ここは本当に高校生の教室なのかと、熱血PTAが居るなら嘆くに違いない。


上擦った変な発音になったが、構わず結衣は友人に抱き着いた。

オーバーな赤ちゃんから香るコロンの甘さ。


ちなみに、里緒菜からすれば、結衣は自分よりかなり背が高いのだけれど、

言動が幼稚だからか、あるいはおっとりとした雰囲気のせいか、

見た目よりかなり小柄なイメージだ。


「青柳さんの次に好きー」と言えば、「働くおばさんじゃないし、嬉しくないし」と、

小ネタを混ぜたわちゃわちゃした会話が楽しい。


下から覗く親友の顔は実に現役らしい造形品だ。

五年前だろうか、付けまつ毛がじわじわと市場を賑わわせ始めたのは。

懐かしのマンバメイクのブームが緩やかに去った十年程前は、

マスカラでどれだけ自まつ毛を自然に伸ばせるかが勝負だったし、

当時で言えばコンサバ雑誌が支持され、アイメイクはいかに薄く見せるかが肝だったが、

近年は、付けまつ毛ですけど何か?と言った具合に、

ファッションの一部として人工的なまつ毛は馴染んだように思う。

昔は『へー付けまつ毛なんだー』と、良い顔はされなかったが、今はそんな見解は少なく、

むしろオシャレポイントとなっている。


このように、メイクは時代の流れで変化するらしい。

それこそ数年前は、目尻のアイラインを跳ねさせるのが流行ったが、今は垂れ目である不思議。

里緒菜は付けまつ毛と自まつ毛が綺麗に馴染んでおり、

手先が不器用な結衣としては羨ましくて堪らない。


そんなオシャレな友人がくれたのは、バレンタインの魔法の書だった。