揺らぐ幻影


《甘いのいいよね、今日パフェ上手に出来た。私すぐ太る。近藤くん細すぎ》


《購買のパフェみてーなん甘すぎるくない? 喉が壊れる。殺人スイーツ笑。五十五キロないくらい?、筋肉ゼロですから笑》


個別設定の着信音を聞いて幸せな気持ちになれる。

直接話したほんの数回を合わせても、三十分にも満たないけれど、

しっかりと近藤の声でメールを黙読している結衣がいる不思議。


  パフェって発音が昭和なぶりっ子だよね……

  リボンって感じ、でちゅわじゃん


購買に売られているそれは、若者向けファッションビルに入っている割と高めなアイスクリーム屋さんのアメリカンな甘さに似ていて、

ワンコインもアイスに投資するのは惜しい節約思考の結衣は、

半額以下で気軽に学校で味わえるため、好んで食べていた。


サラリーマンの人が残業の後に、ご褒美としてコンビニスイーツを買うのは、

甘さが口いっぱい広がり疲労感が減るからだろう。


一方学生の彼女の場合、夏場の体育の後に毎回食べて癒されていた。

せめてゼリーだと、クラスメートからはありえないと顰蹙を買っていたが、

あのベッタベタでカロリー無視の露骨な甘さが好評価ポイントなのに、

どうやら近藤とは甘味レベルが違うらしい。

彼は海外のお土産を甘過ぎると感じるタイプなのだろう。

そうなると、バレンタインはミルクチョコレートより、

ビターチョコレートの方が良いのかもしれない。


甘党でないなら、ケーキバイキングデートは無理かなと、

膨らむ未来への妄想を馳せて、メールを繰り返す。

けれども、積極的な子と迷惑女の境界線が謎だし、

やはりメールばかりして実際には対話しない関係が不自然な気がし、五通だけでやめておいた。


暗がりで手を翳しても指は見えなくて、ただ闇に同化する。

わざとベッドから足をはみ出して寝転ぶと、

重量か何かがふくらはぎに負荷がかかって気持ち良い。

眠りに就く時に思う。
夢の中でいいから会いたい、眠り姫のように毎朝 口づけをして起こしてもらいたい。

欲張りで幼稚な、けれどロマンチックで叶いそうで叶わない結衣らしくない願いは、雑な寝息に吹き飛んだ。


…‥