揺らぐ幻影




柔らかいコットンリボンで束ねられた爽やかカラーのレモンイエローの造花を逆さまに飾ってある壁に対面し、

一目惚れして買った透明の時計をかけているのだけれど、

実際使用すると文字盤が薄くて見えにくいが、

ナチュラルで可愛いし、招いた子が揃って食いつくので、

インテリアの中で結衣は特に気に入っている。


彼女の部屋は全体的に薄い水色と白で統一されており、

なんでもレースカーテンで隠しているため、目隠しをめくればごちゃごちゃしているのだがきちんと片付いていてシンプルな印象を受ける。



携帯電話のメモリーのア行からカ行に進むだけで、指先から緊張が走り心臓が狂う。

好きな人にメールを送るだけなのだから、

相変わらずオーバーだと呆れるも、どうしようもない。


《一キロ痩せた。褒めてもいいよ笑。近藤くん甘いの好き?》


こんなメールは重たいのかもしれない、自分で自分に引きそうになる。


近藤に恋をした自分、今までの自分。

恋愛的な部分を振り返ってみても、結衣はどちらかというとフランクな言動のおふざけタイプだった。

物影から胸をときめかして恋心を温めるのではなく、

友人らと『かっこいい』と本人を茶化して囃すくらい大っ広げに心情を晒してきた方で、

運動場では『先輩好きー』『先輩カッコイイー』と惜し気もなく叫んだりして、

それらを分析すると、結衣自身、重たい女ではないと思っていたのだが、


それがまた、どうして彼のことになると別人になってしまうのだろうか。

薄気味悪い少女でしかないなんて自分で自分に鳥肌だ。

好きという気持ちは無邪気な分、限度が付けられないので、

リアルに痛くなっていやしないかと不安になる。

重たくなりたくないと考えることが重たいだなんて発想は、恋愛見習いの結衣になかった。


こんな風に悩んだり、半日前のように浮かれたり、片思いはコロコロ気分が変わる。

言うならお天気雨だ。
晴れて笑いたいのか、雨を降らし泣きたいのか、どちらかなのか分からない。


曇り空とも違うややこしい天気。
それが片思い。お花畑の国に雨は降らない、降るなら甘い甘い飴――ほら、メルヘン仕立てが幸せの簡単な摂取方法だ。