揺らぐ幻影


バレンタイン話は終了、男子も離れ再び三人の時間となる。

里緒菜が復活希望の深夜バラエティーを三つも四つも挙げ、

「ノミさん」と何度も愛美が付け足している。


他のグループも各々雑談に盛り上がる一方で、カーテンを背に結衣は一人黙考していた。


  大丈夫、なのかな

  良かった

同級生の男子目線で手作りプレゼントを『生理的に無理だと嫌がられる女』ではないようだと、

先程の茶番で判明したのでほっとした。

もちろん近藤がどう思うかは不明だが、一定の水準を自分がクリアしていると分かったのは大収穫だ。


クリームチーズをちぎって空に投げたら雲になるのだろうか。

長いこと空を眺めると前向きな気持ちになるけれど、距離感が掴めなくなるのは何故。

焦点が合わなくなって変な気分になるような……だから間違った目をしていないかと不安になる。

視覚から構築される洞察力に狂いはないのかと。


あれはクリームチーズではなく、ただの雲。水蒸気の塊。多分理科で習ったはず。


単純な結衣は安心したらお腹が空いた。

近藤のウエストサイズが自分より細そうなため、最近は微妙にダイエットをしているので、

なるべく炭水化物を減らして野菜中心を心掛けている。

数日前から胃が小さくなったと効果を感じていたが、今なら大盛りカツ丼をがっつりさらえられる。

けれども我慢した。
好きな人が居るとダイエットが趣味になるのは何故。


  チョコ、頑張ろう

  馬鹿に頑張ろ

チャイムと共に始まる授業は、先生が急用で自習用プリントが二枚配られた。

教科外の監督先生が見張りをしているせいで、私語がてら遊べずに、

シャー芯が削られていく雑音を立て、皆きちんと問題を解いていく。


こんなプリントは後から誰かのを写せばいい。

そうと決まれば話は早い。授業はそっちのけだ。


  レシピ探そ

右手にシャーペンを持ち、勉強している姿勢を作りつつ左手に携帯電話、膝上で弄る。


なぜならマドカ高校では、一応携帯電話は持ち込み不可で、

一日没収され放課後職員室で長々とお説教をされるのだ。

というのは建前で、悪質でないなら黙認されており没収は稀だったりする。