揺らぐ幻影


「家庭的、大和撫子ーサッカー」

「胃袋掴め、池袋ー紙袋ー」


「、っ――」

  なん、で?

それは予想外の反応だった。
比較的調理が簡単なミネストローネを煮詰めすぎて、

泣く泣く味見をしたら、かえって成功した時くらい明るい意外性だった。


  、なんで?

いつもの調子で笑いながら賛成する愛美と里緒菜、正反対な予想しかしていなかった結衣としては拍子抜けするしかなかった。

そう、手作りチョコなんて気味が悪いからありえないとか、

重たいからやめろとか、否定的なことを言われると思っていたのだ。


しかし、二人はハンドメイド歓迎で、そこにドン引きした様子はなくて――

とはいえ表面上はこのように笑っていても、内心結衣の発言に引いているのではと疑ったが、

やはり友人らのウェルカムモードは変わらない。


  引かないの?

戸惑いつつも、「いいんですかいいんです、ふむー……で、ミスターノープランじゃん」と、

愛美と里緒菜の先程の小ネタに、結衣も口先だけでゆるく返した。


冗談を言うも頭は追いつかなくて、会話の中の感情を拾えない。

片思いの段階で手作りお菓子はアリなのだろうか。

同性に贈るにしろ親しくないと口に入れるのを躊躇う場合があるのだから、

異性ともなれば本気度が強くハードルは非常に高い。


『ありがとう・気持ちが篭っている・嬉しい』なのか、

『気色悪い・怖い・重たい』なのかは五分五分だ。

きっと奥クラスの可愛い女子ならば、男子も喜んで、むしろ進んで食べるだろうが、

自信がない結衣には、自分の手作り品が抵抗なく受け入れられるとは思えない。


お手製チョコを贈りたいけれど、近藤に『ないわ』と一気に避けられる危険がないとは言い切れない。


例えば、ざっくばらんに接する仲の大塚になら、

『乙女に手作りーどうぞ』とか、『趣味料理のオンナノコだから手作りあげる』なんてウケを狙える。

真剣味を落としてネタに転換する自信があるけれど、好きな人だとそうはいかない。


好き好き好きどっしり気持ちがこもるだろうに、手作りチョコを肯定されるなんて、

愛美と里緒菜は結衣の友人だから、手作り品に対して身内評価な気がした。