揺らぐ幻影


しっかりと目を見て言いたい。

なんでもかんでも携帯電話に頼るのではなく、可能な限りは自分発信でありたいと結衣は思う。


それが誰の受け入れかは定かではないが、もしかしたら姉だったかもしれない。

中一の冬に初めて携帯電話を買って貰った時、

『ケータイっ子にならないように』と、釘を打たれた記憶がある。


そして、こんなことを姉が続けたのは、酔いが回り説教臭くなっていたせいだろう。

『メールでなら本音が言えるとかそんなゆとり世代の痛い女にならないでよね』

『ブログしても良いけど個人情報の管理しなよ? 自撮りは引くよ。てか他人に迷惑かけんだからブログあんたはすんな』

『人と居る時に携帯電話弄るとかナイからね、目の前に居る人を大事にしなよ』

『てかケータイに依存しやんと写メも保護メールも自分の頭に記憶しろ』


――失礼な物言いは幼心にインパクトがあり、

また妹にとって姉の発言は常に的を得ていると錯覚する節があり、

そのせいか、結衣は同級生に比べ、あまり携帯電話に愛を注げなかった。


加えて、犯人のブログ内容が報道されているのをよく見たせいか、

友人同士のメールが元で誤解が生じ、トラブルが起きた同級生を知っていたせいか、

なんとなく自分には管理が難しそうだと思い、

彼女はクラスメートたちのように携帯電話を器用に使えずにいた。


一番の理由は、ファンの長寿お笑い芸人さんが、『若い子は携帯電話にハマりすぎ』と、ブラックに世相を斬っていたことかもしれない。


つまり、どこかでアナログでありたいという願望があったのかもしれない。


結衣は古風な人付き合いが好きだ。
無人のレジよりタッチパネルの飲食店より、人と触れ合いたい。

もっとも、近藤に限っては携帯電話がなければ恋は動かないため、携帯電話様は必需品で必要不可欠だ。

世間と自分を比べる程経験や悟りがないので整理できない。

――直接言いたかった。それだけ。至ってシンプルなこと。


とうとう蛍光灯が音を立てて切れたので、運動場に犬が侵入してきたように野次が上がる。


  口説く……、ね

確かにあの市井と噂になるなら、そういうネタになるのかもしれない。

――しかし、