揺らぐ幻影


どうやって授業をサボるか、どうやって頭髪検査を潜り抜けるか、

どうやって赤点課題が減るよう交渉するか、

そして、どうやって授業中にメールを送信するか、

そんな風に毎日女子高生を堪能する。

仲間内で悪知恵攻略方法を交換しあい、あの手この手で現役らしく生きるのだ。


大人は何のための学校だと呆れるだろうし、同級生の賢い人は情けないと嘆きたいだろう。

しかし、学生らしく振る舞うことは時に難しく、かつ素晴らしいのだと結衣は考えている。


――時間は戻らない。

だから『高校時代は馬鹿だった』、『青春満喫した』と、

数年後に旧友たちと盛り上がってこそのらしさだろうし、

あくまで良識の範囲内だけれど、そんな生き方は素晴らしいのではないだろうか。


何より制服姿を無邪気に味わえるのは女子高生までだ。

制服は魔法だと結衣は思う。

私服の時よりもやんちゃ、わざとふざけてはしゃげるような、

そんな風にテンションを上げてくれる役割を果たしている。



突然蛍光灯が黒白ぼやけ、真下の生徒が力を吸い取るからだと教室の笑いを誘った。

授業中も休み時間もE組はいつも気さくで――……というより、

どこか小学生低学年を思わせる幼さがあり、和気あいあいとしている。


  ……。

本当は今すぐ里緒菜に話を聞いてほしいけれど、

たくさんの想いをメールで送るのは気が引けた。

メールは便利だ。
簡単に気持ちを整理して説明できるし、すぐに想いを伝えられる。

なので、市井と話したことを丸々打てばいい。


けれど《授業終わったら話す》と、手紙を投げた。

小学生の時は授業中手紙禁止令が出たので、

紙飛行機にして渡したり、教科書に挟んで回覧板にしたり、シャープペンシルに隠したり……

昔から女の子は作戦を練るには優れているのかもしれない。


里緒菜からはピースサインを貰った。

メールだけをコミュニケーションツールにしたくない。

遠距離恋愛の人や単身赴任の人なら分かるけれど、

すぐ傍にいる人になら、直接感情を伝えられる人になりたい。


そう、結衣は近藤とちゃんと仲良くなりたい。

大切なことを見極められる人間でありたい。