「見た目は完璧、頭良いし喋りも上手いし、スポーツ出来て、で、デザインの才能あって将来有望でー? やばいね、あんたイケメンじゃんウケる。
ほんま眉目秀麗の完璧な王子様、女子の理想そのものじゃん、なのに私、私全然、わたし――……?」
『なのに私どうしてこの人を好きにはならないんだろう』、だよね
そこまで言って、口吃る。
そう、なぜ結衣は市井ではなく近藤が好きなのだろうか。
正直、中身のある話をしているのは市井とだし、自分のことをやや理解しているのは市井だし、
現にこうして絡みが深いのは市井だし、声をかけやすいのは市井だし、
失礼ながら女の子が惚れるポイントなら、近藤より市井の方が勝る。
、なんか
……市井って間違いなく幸せにしてくれる人、なのに
婿候補、みたいな
自分の気持ちがよく分からない。
理由なく、誰よりも近藤が好きだ。
社会人になると根拠がないことは口にするなと言われるらしいのだが、
結衣目線だと、曖昧でも大好きなのだからしょうがない。
ありえない話だけれど、例えば近藤に振られて市井に告白されたとしても、
彼女は王子様と付き合う発想がない。
なぜ絶対的に近藤洋平を選ぶのだろうか。
これといった特別な二人だけの思い出なんてないというのに。
何も親密なエピソードなんてないというのに。
スプリングの両端を肩幅に広げて回せば、残像で酔ってしまいそうだ。
「はは、俺が王子様ならどうしようか。まずは権利を武器にお姫様を幽閉しようかな?、あはは。
本物の王子様に俺すぐに暗殺されるかな? やっぱ凡人でいいや」
おかしそうに笑う市井に結衣は感謝した。
どうやらパーフェクトな彼とは違う人が、自分は本当に好きらしいと気付けた。
まだ愛を語れるくらいの重みはないけれど、恋をしているとは言える。
「いいなぁ美男美女カップル」と笑えば、「また噂?」と揶揄された。
悪意あるゴシップに負けるなと教えてくれたのだって彼だった。
内緒だけれど、結衣の中で男友達の欄に市井雅の名前を書いておこうと決めた。
相手の意向は知らない、なぜなら彼女は自分本意のためだ。



