混乱の気持ちが直接顔に出ている結衣をカジュアルに見下したような笑みで、
「なんかねー田上さんって本当アホ臭くて。呆れる、純粋?、ううん痛いんだなぁって。
せめてノートくらいとりなよ、学費を募金するとか勇者だね。
愚図を応援したくなるとか俺って母性本能あるのかな?」と、市井は再度冗談を始めた。
世間話が少々不可解で、少女は軽く戸惑うしかできない。
だから……、なに。
馬鹿? 呆れる? 純粋?……は?
いみふめー
純粋なのは恋愛のことを指しているのか、馬鹿なのは恋愛に迷走中のことを含ましているのか、
あるいは世界史のテスト勉強についてなのか、さっぱりだ。
結衣は難しそうに眉を持ち上げて露骨に顔をしかめた。
「馬鹿は嫌だけど。赤点……あはは」
もごもごと照れ隠しに言ったものの、なんだか大塚みたいな態度になる自分が情けない。
彼のような格好悪い雰囲気を漂わせている自信がある。
遠回しに恋を指摘されているのなら恥ずかしい。
好きだとバレバレなのは恥ずかしい。
砂糖と塩を間違えたとか、洗顔フォームと歯磨き粉を勘違いしたとか、
その類いのわざとらしい感じ、おもがゆい感じに似ている。
きゃあきゃあとした熱の篭った視線に、身体の輪郭が燃えてしまいそうだ。
瞳の端には女子生徒がこちらをまだまだしつこく見ているのが映る。
毎日毎日こんなに異性から注目を浴びているなんて、
市井を尊敬するしかない。
結衣なら大塚ばりにどぎまぎしまくるはずだ。
絶対気付いているのに、気にしたそぶりを見せずに振る舞う彼は正真正銘の――
「ほんと王子様、なんかウケる、あはは」
それこそ馬鹿みたいに呟いていた。
失笑気味に王子様じゃないと否定する彼に、食い気味に彼女は続けた。
彼が纏う桃色の空気が変化したことにも反応できずに、鈍感女はお喋りを始めてしまっていた。



