揺らぐ幻影

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南側の校舎の壁を、起き上がったばかりの太陽が白に塗り直す頃は、

英単語も苦手だが、カタカナの並ぶ世界史の授業も眠たくなるばかりだ。

まつ毛はボリューム重視で酷使し過ぎているのか、とてつもなく瞼が重たく、

こっくりこっくりして体が痙攣する瞬間、意識がハッと戻る。

そしてまた緩やかに眠くなり……を、繰り返すこと数回。


文系と言いながら結衣は英語も世界史も、そもそも勉強が嫌いだ。

机に座って勉強をするなら外遊びがしたかったし、アルバイトがしたかった。


マドカ高校は勉強一色の生徒ばかりだと、社会に出た時にバランスが測れない子が出るだろうと危惧し、

成績云々よりも人間性を見る面接重視の推薦枠があり(面接時間二時間と心理テスト二時間)、

そこを通過したきわめて社交的な生徒がクラスに五人ずつ配属されていて、その一人が田上結衣だ。


彼女がマドカ高校を受験した理由は、県立なのにまず十代目線で制服のデザインが可愛いことで、

中学がセーラー服だった分、ブレザーに憧れたし とにかくカラーシャツが着たかったし、

リボンとネクタイを選べるという点が、

女子高生ライフを夢見る中三の少女には希望だったのだ。


次に学校と自宅の立地条件だ。

通学路には街中が含まれており、買い物が好きな結衣には学校帰りに寄り道が出来る点が最高に理想だったのだ。


つまり、専攻内容や卒業後の進路、世間からの評価やウケよりも、

いかに女子高生の放課後を満喫できるかの割合が高かった。

ファッションビルでショッピングをしたり、休憩に入ったクレープ屋さんでガールズトークをしたり、

遊んだ証拠にプリクラを撮る――いかにも弾けてます!的なスクールライフに夢を見ていた。

実現させるには、相手の近藤が必須な恋を手に入れるまでなのは言うまでもない。