ジグソーパズルの最後の一つを嵌めた瞬間のような、
マスカラだけでまつ毛に良い感じのボリュームが出せた時のような、
これから本番の文化祭の劇で、幕があがった際に拍手を浴びているような、
――この胸の高鳴りが好き。
試合が終わったので、中心に整列して敵チームにお互い頭を下げている。
近藤洋平は背中を真っ直ぐに腰から折るので、清々しい一流の接客でおもてなしをされる気分になれる。
、かっこいい
カッコイイな
高校生になると、体育に一生懸命打ち込む姿が恥ずかしいのか、
中学の時に比べると、手抜きでだらだたらした印象を受けるのだが、
彼は楽しんで笑いながら授業に励むので、結衣の中で好感度は上がる一方だ。
好きな人だと何をしても様になり、いちいちキュンとなるばかりで、
頭の中を支配するのは――
「結衣ちゃん恋の病?」
「――は、?」
こいのやまい?
朧気な瞳は一気に光を戻し、真ん丸に見開いた結衣は、
真っ白になった頭をどうにか再起動させようと試みる。
しかし、ここぞと言う時に薄ら笑いしか武器がない彼女の脳はうまい具合に働いてくれないので、
案の定、引き攣った笑顔を二十一秒披露するパターンしかない。
なんでバレてんの?
言ってないし
『彼氏が欲しい』は口癖だったので、しょっちゅう言っていたけれど、
好きな人が居るなんて音は奏でた覚えはない。
“なんで”が思考を埋め尽くす時――ちょうど入れ替わりの合図が鳴った。
爆弾質問を投げかけた二人は、勝手に爆発物を処理してコートに向かうので、
結衣も誤魔化すよう笑いで流して後ろを歩いた。
尋問は得意ではない。
嘘が苦手な自分はホイッスルが鳴らなければ、恐らく白状していただろう。
絶対に口にしたらいけないと言うのに、近藤洋平に片思いをしています、と。
近藤くんってばれてないよね……?
甘いドキドキとは違う居心地の悪いドキドキに舌打ちをしたかった。
それは小学生の時にテストで悪い点をとり、答案用紙を隠していたのに、
あっさりと母親に見つかった瞬間のスリル感に似ているように思う……なんてもう記憶にないけれど。



