結衣と近藤の場合、千五百円いかないくらいが妥当だろうか。
二千円代にいくと『気合い入ってます』と、露骨に主張することとなるだろうし、
五百円前後では無意味な義理チョコだと思われることになるだろう。
片思い――それも恋愛初心者となれば、細部まで心配になり逐一こだわりを見せる。
例えば値段だけではなく、箱の大きさにだって迷うのだ。
手の平以上では、お歳暮の残りと判断されるかもしれないし、
指輪のケースくらいの小箱だと、ケチって店で一番安いものだと批判されるかもしれない。
女子ならば小さめが意外と高い事を知っているが、近藤が気付くとは限らない。
なので、携帯電話二つ並べたくらいのサイズがベストだと考えた。
甘い甘いチョコレートのように、べたべたに溶けてしまいたい。
タチが悪いくらい纏わり付いてしまいたい。
それでも舌打ちされると嫌だから、彼に選ばれるまでショーケースで大人しく待っておく。
愛美が勧めるのはトリュフで、黒色の細長い箱に三つ入っていていかにも高級そうだ。
里緒菜推薦なのは生チョコで、老舗らしくラッピングは簡素だ。
全然、わっかんないよ
全部美味しそーだし
たくさんありすぎて頭が回らないので、今日は下見にしてお開きになった。
バレンタイン
チョコ……
ご飯のメニューを選ぶ時も、服を買う時もすぐに決めるため優柔不断な性格ではないし、
自分は何事もあっさり選択するタイプだと思っていたが、
好きな人に関連すると、本来の考え方が壊れてしまうらしい。
永遠に迷える。思考の中で迷子にさえなれる。
闇色をした世界を見上げると、星の輝きを打ち消すように街灯が邪魔をする。
零したため息は、白く浮かんであっという間に散って消えた。
儚い白は一瞬の、たった一度きりだから綺麗なのだろう。
景色なんていちいち見ないし、星や風に気持ちを重ねたりしない。
ただの女子高生の結衣は、ロマンチックに自然と向き合ったりはしない。
それでも何故か、恋をすると五感が詩的になる。
そう、今、風が後ろから吹いたのは、どこかに居る片思いの女神様が頑張れと言ってくれた証拠――……



