揺らぐ幻影


難しそうに顔を歪ませる結衣を尻目に、呑気にポテトフライをつまみ食いしつつ、

里緒菜は「普通にバレンタインとか良いきっかけじゃん。友達って呼べるけど浅いからなんかもう一歩踏み込みたい的な。

だったら義理、善意、社交辞令と言う名の元にチョコの一つや二つ」と、一押しした。


合わせるように愛美が「三つや四つ」と、お約束に増やして、

最後に「十個や二十個」と結衣も被せ、三人でウケてみた。

ツボの浅い笑い声は各テーブル席から起こっており、

まるで夏休み初日のように賑やかに盛り上がっている。

活気があるとメンタルがプラス思考に明るくなる不思議。


透明なガラス窓の奥には 眩しい車のライトが行ったり来たりしていて、

そんなまばゆい光を吸収する闇色に辺りは包まれていた。


  きもく、ないのかな……

巡り巡る自問自答を何回繰り返したのか分からない。

近藤が引いたら引いた、引かないなら引かない。

たった二択を永遠に悩めるのだから、時間がいくらあっても足りない。


そんな恋愛初心者の頭の中を見兼ねたように、愛美は他の話題を提供する。

「バレンタインってお菓子業界の陰謀ってマジ?」

そう、ベタなネタを放り込むことができたなら、立派な現役女子高生らしさを手に入れることが可能だ。


「テレビで見たかも」
「恵方巻きもらしーよ」

「父の日は後からーって」
「それパパ切ない」
「商業じゃん!」

まんまと日本人は躍らされると、お腹が痛いくらい爆笑する。

そんな自分たちもばりばり日本人だが、そこはノータッチで小ばかにしてこそ、

青春のセオリーなのだ。


知ったか雑学ネタを披露して笑うのが、そう、放課後の定番、その五ってやつだ。

シリアスよりオチを狙って脚色した小話が勉強より何より命だと説いても、間違いにはならない。


好きな友人とだからつまらない点にも笑えるだけで、愛想笑いなんて必要ない。

オーバーなリアクションがとれる距離感が友情の証だと言えるのではないだろうか――……

なんて、格言のような感覚は欝陶しいため、結衣は知らないけれど。