揺らぐ幻影


ぶりっ子が趣味な結衣は、ごくりと唾を飲み、両手でパチンと小さくホッペを叩いて可愛い女子の作業を真似てみた。

愛美、里緒菜。
恥ずかしながら大好きな友人だと言える。

迷っていたら助けてあげたいし、泣いていたら抱きしめてあげたいし、かけがえのない人だ。


クラス替えや卒業を機に疎遠になるような絆ではなく、

二年後の春に進路が例えば就職・短大・専門と別れようとも、

新しい生活が始まろうとも、定期総会をする仲だろう。

そして、きっと結婚式にスピーチをお願いする間柄になるんだと思う。


――つまり、人生に欠かせない大切な人なのだ。


なんて語りは結衣らしくない。
これが素面ならば、なんてメルヘンな物言いなのだろうか。

だって思い出してみて。
ランドセルの頃から女子は殺伐としている面があると言ってもあながち間違いではない。

なぜなら一人にならないために親友を利用して、クラスが変わればおさらばな通り道の友情だってあるのだ。


よく分からない。
小学校の時に五年連続同じクラスだった幼なじみと同じくらいの歴史を、

出会って半年の二人に感じるのは何故。


友人とは秘密を一番に言える存在であり、

逆に秘密を言いづらい存在でもある。

大好きだから素を見せているのに、時々あっけらかんと披露するには怖かったりする。


心を沈めさせ、結衣はゆっくりと口を開いた。


「私はーあのー、田上さんはですねー、んー。あはは、バレンタインにチョコ?……渡したいらしいです」


女の子相手に真っ赤になる。恥ずかしくて照れ臭くて反応が怖くて……

きつく目を閉じると、付けまつ毛の根元があたって痛かった。

それは現代的な弱みだ。


「うっそー頑張れ! うわーめっちゃチョコレート」

「告白しちゃうんですか? 胸の内を明かしちゃうんですか?」

愉快な物言いは第三者だと白けるノリでもあるが、仲間内では問題ないので、結衣は気にしておらず、

からかって囃し立てるのではなく、

明るく元気に応援してくれようとしている二人なのだと浅い歴史から察することができる。


決意の報告をすると考えただけで、昨日から緊張していた結衣だというのに、無駄だったようだ。