揺らぐ幻影


アットホームな雰囲気なので、お客さんはエクステが自慢の高校生よりは縮毛矯正がお気に入りの中学生が多い。

そのせいか全体的に街中の洒落た感じはなく、ローカルで穏やかな空気が漂っている。

クリーム色の円卓がいくつも並び、椅子が取り囲んでいる。


二年前に流行った曲がカラオケバージョンでうっすらと聞こえ、

その古臭く、どこか野暮ったい感じが心地良くて、ほっとする。


「目ぇ浮いてる、かーわい」

「なんか3Dぽくない?」

「飛び出す飛び出す眼鏡いらないってゆー」

クレープ屋で買った大盛りポテトフライを三人でつまみながら、

さっき撮ったプリクラを眺め大袈裟に笑う。


最近のプリクラは自動的に修正され目が三倍にも大きくなり、

別人というより、もはや人間味がなく次元が変わってしまう。

以前は目を際立たせるように濃くするペンで好きに選択できたのだが、

いつからか、ほとんどの機種が勝手に目の加工をするので、

普通に写りたい利用者からすれば困ったものである。


薄いアイメイクの時でも がっつり化粧をしたみたいに目を強調させる匠の技に、結衣は圧巻だ。


また美白加工は技術を上げ鼻なんて見当たらないし、下手したら眉毛がなくなる故、

詐欺を通り越した写りはため息ものだ。
もっと普通な写りがあれば良いのにと思う利用者の声は、いつ汲み取られるのだろうか。


そんなプリクラは、女子高生で言うなら社会人の名刺に似ているといってもオーバーにはならないのかもしれない。

落書きからセンスの良さや、キメ顔とヘン顔の作り込み具合によって人柄が現れる。

また撮ったシールは交換して友人のプリクラ帳に貼られたり、許可なくブログで公開されたりで、

ツレのツレのナントカカントカで知らない男子から紹介してと、

出会いの場を繋ぐツールにもなりうる。

そう、社会人の名刺の会社名や肩書が、視覚的に示されているような感じだ。


ついさっき撮影した『ぽこりん』とハートのスタンプで囲われたプリクラ画像を、

早速、暇な結衣は携帯電話の待ち受けに設定した。


  よし!

たったそれだけで、上手くいく気がするおめでたい脳みそで、手作り恋愛成就をした。