揺らぐ幻影




わちゃわちゃと団体ごとにお喋りが沸き上がる放課後は、

たくさんの学生が彷徨い、街全体が活気に溢れ賑やかだ。

自己主張は爆笑のボリュームでありツレの数であり、

すれ違う人間への牽制で忙しい。


バス内も電車内を占める制服率がグっと高まる時間帯は、

彼らの勢いに圧され、ファーストフード店では席を立つお客も増える頃だ。


今日の結衣は、五時間勤務のアルバイトを積極的におさぼりしている。

たまにやってしまうのは、無責任に代打を探さず当日休むと仕事先へ連絡をすること。


同日のシフトのスタッフ以外にも、

正に『これだからバイトは』と、ため息混じりに呆れられ、

真面目に働いているスタッフがアルバイトと言う同じ括りなだけで、

とばっちりに評価を下げられる結果を招くのが、

結衣のように気まぐれにドタキャンをする人間の存在だ。


彼女だって働いて半年以上、休まれては皆が困ることなんて百も承知だが、

しかし、時に女子高生にはアルバイトよりも、恋愛会議をすることが大切だったりする場合がある。

イコール、里緒菜も休んでくれたのは言うまでもない。


恋真っ只中な少女は目の前のことしか見えていないので、

店先が被る迷惑や自分の落ち度に気付かない。


「寒いねー鼻水がー」

「コート重い、紐が肩に食い込む死ぬ」

「なんも買わなかったーなんか買いたかったのにー、なんかなんもなかったし」

悠長に放課後デートの感想を言い合いながら、

三人は横に広がり寒空の下を歩いている。

ちなみに自転車は駅に停めて、自分の足を頼りにその場その場でゆっくり徘徊することが、学生の強味だ。



飛行機が歩いた空は澄んでいて、先がないくらい高く思える。

一直線の雲の濃い部分と薄い部分を追うと、自然と背筋が伸びた。