瞼と涙袋を近付けて狭くなった視界にいる無駄に茶色い髪をした男の子に、
「どれだけすき?」と、可愛いことを尋ねてみた。
無邪気な彼なら両手を広げて教えてくれる気がしたのだけれど、
「すっごい好き、愛してる。世界で一番。俺の全てで、結婚したいとずっと思ってて、死んでも好き。そのくらい」と、
幼い顔には合わない真剣な言葉を並べられた。
市井の意外性に結衣はただ瞬きを忘れ、まじまじと同い年の男子高校生を凝視した。
は……?
何語ってんの
え、何? ここは愛してるってネタで言う場面でしょー?
ライトなノリを想像していたのは結衣だけではないようで、
そのくせ「そんなん俺聞いたことないし」と、やや不服そうに近藤が咎める。
えー、ぽこりんまでガチ?
なに?、茶番?
待ってよ、何この会話ん流れ、
何、ボケ被せ?、意味不
茶目っ気のある声のトーンの割に、二人の淋しそうな顔が悲しかったし、
突然なシリアス話に、重みのある愛だと漠然と感じた。
……柔く微笑む市井に比べ、結衣は近藤のことを そこまで好きなのだろうか。
あいしてる、とか、言える?
死んでも、好き、とか、は……?
近藤を愛してると語れるのかと言われたら、よく分からない。
従って結衣なんかが軽々しく聞いたらいけなかった気がした。
親友には告げない彼女の話を、何故さほど仲の良くない彼女に言うのか。
瞳の端で近藤が静かに唇を噛んだのは、打ち明けてもらえなかった悲しさなのか、
どこか意味ありげな友人への悲しさなのか、
どちらなのかは、お気楽な彼女に分からなかった。
それよりも、自分の日常生活範囲内ではありえない独特な雰囲気に怯んでしまう。
――なんて、シリアス要素は嘘っぱち。
「って言えば女子高生が好きな王子様キャラ?」
市井は爆笑していた。
「そんな臭いの言うわけないじゃん俺、マトモだもん」
危ない、危ない。
たちまち結衣の世界が摩訶不思議な切ないと定評のあるラブストーリーになるところだったではないか。
オチまでが長すぎて乗せられていた思考、少々決まりが悪かったのは内緒だ。



