揺らぐ幻影


お姉さん座りをした結衣は、もう一度スカートを叩いた。

中学の時はハーフパンツを履くのが定番だったが、高校生になると履かなくなる不思議を誰か教えてほしい。


ショーパン履いとけば良かったと、まだしつこく気にして、結衣はどうでもいいことを考えている。

今のご時世、下着屋さんは店頭に堂々と上下セットでディスプレイされており、

通行人の男性は微妙に目線に困るが、逆に耐性も備わるらしく平気なようだ。

たまにカップルで選びに来ているお客が居るけれど、もし結衣なら周りのお客が彼氏をどう思うか不明なので、

店の外で待ってもらうよりも、最初から一緒に買いに行かないと付き合う前から勝手に予定を決めている。


また近年は下着イコールセクシー路線と言うより、

ますます水着のようにファッション性が高いものばかりになった。

なので服と同様、人目に付くよう大々的に展開していても、

恥じらいなく女性客は選べるようになったし、

また、少々見えてもオシャレのワンアイテムに過ぎない。


そんな可愛い下着は、サテンやレース、フリルどころか、スワロやリボン、ビジューさえついており、

ヒョウやらプッチやらハートやらゼブラやら たくさん模様があり、

三千円が相場の女子高生に人気なショップには、凝ったものだとトップスが買える値段もあったりする。


以前は友人とお揃いで三千円くらいのお求めやすいセットを買っていたけれど、

安いものだと何回か洗うとワイヤーが歪んでしまう場合があるし、

ハタチ前後向けの最近のものは、普通のブラジャーでも最初から入っているパッドのクオリティーが高すぎて、

ジェルやらシリコンやらエアーやら後ろめたさを感じる結衣は、

愛美がオススメしてくれた日本の老舗メーカーのオーダーメイドのものに夏休みから変えた。


そして驚愕した。

革命的なパッドもないのに、何故か谷間が普通に生まれるなんて、

これが老舗の技術なのかと圧倒して、企業努力を尊敬したくらいだ。


ぼんやりと下着について無意味な解説をしている結衣の目に入ったのは、マドカ高校の王子様だった。

杏のコンポートに浸かったような甘い笑顔をしている。
迂闊に触るとベタついて、たちが悪そうだ。