揺らぐ幻影


このように生徒を甘やかすことは簡単で、逆に叱ることは難しい。

子供から慕われるのは授業に手を抜く雑談ばかりの先生や、

こんな風に校則違反に目を瞑るタイプだ。


やたら宿題を出す先生や、生活指導に厳しい先生は生徒からは文句を言われやすい。

前者か後者、どちらが優しい先生か、学生の中身次第だろう。


ちなみに、まだまだ未熟者の結衣には、間違いなく前者が最高に生徒想いな先生であることは言うまでもない。


  楽勝楽勝

肌色のコンシーラーを詰めた耳が痒い気がした。ピアスホールなんてチェックされなかった。


体育をしている時は走るのがたるいくらい広いのに、

こうして学年生徒全員が集まると窮屈な気がする。


狭いはずなのに大好きな人は遠く感じるのは何故。

難しい顔をしている近藤は、恐らくチェックにひっかかったのだろう。

こんなにたくさんいる人の中で、たった一人を好きになった。


これが運命だよねと、結衣は失笑した。

女子高生には綺麗な単語が感動ポイントらしいが、彼女には当て嵌まらず、

運命なんてちゃんちゃらおかしい日本語で、なかなか素面では言わないフレーズとして位置付けている。

だから己の発想に冷ややかながらに幸せな笑いが止まらない結衣は、お花畑の世界に浸っていた。


高校受験の時にマドカ高校を選んだから出会えていて、

自分がE組だから出会えていて、

(この場合はブラックにシュールさを狙うには、出逢うと記述するのがベストだろうか)、

何か一つ違えば今はない。

愛美と里緒菜のどちらかが他の高校を受験していたって今はない。


まさに運命だ。
近藤に出会えたことも、恋をしたことも、中学生が説明するなら運命ってやつだ。

この自分が運命を持ち出すなんて究極に笑えるネタだと思う。

捻くれガールには爆笑必須だ。

そんな今の自分が数年後には人生を飾る素晴らしいネタになるなんて最高じゃないか。

片思い思考は痛くてナンボだ。

ツッコミ所が多い分だけ、今の自分が頑張っている証拠だと言えるのではないだろうか。

もちろん素直な乙女には心外だと叱られることなど、まあま常識人の結衣は承知なのだけれど。