揺らぐ幻影

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北風は嵐のような勢いで、根こそぎ木々を薙ぎ倒すのではと心配するくらい、

うるさく暴れながら建物の隙間を通っていく。


「えー!! 待って、頭髪検査だった訳?」

朝一番にとある女子生徒が叫んだ言葉通り、

週初めの今日は抜き打ち頭髪検査が行われる。

声の主は“抜き打ち”予告を、ぼんやりとして聞いていなかったせいだ。


女子高生が持つべきものは同類の友人だ。

愛美に黒スプレーを借り茶色を消すよう噴きかけて、

(近年は明る過ぎるカラーは似合っていないと、逆にダサい印象を与えるので要注意だ)、

くるくるした髪を櫛でとかしストレートに伸ばしてサイドにまとめ、

(巻き巻きも似合っていないと、痛い女だと後ろ指さされるので要注意だ)、

当然メイクもチェックされるのだが、

(お化粧もがっつり濃いのは似合っていないと、逆にセンスがないと思われるので要注意だ)、

検査をする時に確実に近藤に会えるのが分かっているのに、結衣はスッピンであることが乙女的に嫌で、

里緒菜のだてめがねを半ば強制的に借りた。


短いチェックのスカートはロッカーに置いたままのサスペンダーで吊し、膝上まで長くし工作し、

ネイルはひっそりと職員室に侵入し拝借した除光液で落とした。

ネイルサロンでしてもらったホログラムいっぱいだった愛美の爪は、

短く切ってあって勿体ないと思う。


なんやかんやで数分後に出来上がった結衣は真面目な生徒の訳なのだけれど、

この茶番が高校生活のプチイベントだったりする。


そもそも頭髪検査の目的が彼女にはよく分からない。

チェックの時だけ取り繕えば、普段は目をつぶっていいと言うのだろうか。

また甘い先生は明らかに違反していようが何も指導をしないのに、

厳しい先生は普段から職員室に呼び出し、時には親に電話をしたりする。

平成の世の中だからか不明だが、後者のような熱血教師はごく稀であるも、その差が謎でしかない。


生徒の身嗜みは、先生のさじ加減。
それが情けないことなのかどうなのかは謎だ。

ちなみに若気の至りなのか、再検査になることを武勇伝にする痛い生徒もいるのが高校生あるあるらしい。