揺らぐ幻影


顔を見ずとも、色白の彼女が顔面蒼白で意気消沈している様子が浮かぶので、

『んー? そりゃ気にしすぎだって。気になる子くん。ハテナ文なんだから大丈夫だって、ね?』と、

正反対の冷静な言葉を選び、わざと冗談を挟んで幼稚な少女を落ち着かせるのが、

親友をやっている里緒菜の役目だ。


「、そっか、そう、うん、ハテナだもんね……そうだよね。あはは、……ありがと、ふ、返事するよ」

自分とのお喋りよりも早く返信しなさいという里緒菜の言葉に甘え、

一方的にかけた電話を結衣は厚かましく切った。

このような一見ワガママ自分本意の電話さえ迷惑に値しないのは、

彼女たち三人組が世間よりカチンなポイントに鈍感だからだろう。


どうでもいいことにオーバーになってしまうのは一生懸命な証拠で、

一人では無理だけれど、友人が軌道修正してくれるから大丈夫だ。


三十分の毎週見る番組がいつの間にか終わってしまっており、

もう次の番組が始まっていると気付き、やっと結衣は我に返る。

貴重な時間を無下にしてはならないではないか。


《朝から三時過ぎまで。バイトの後みんなで斜め向かいのライバル店で食べた笑》

《お疲れ、他店に売上貢献してんじゃん笑。悪い奴。俺休みだからずっとダラダラしてた暇人》

近藤の砕けた雰囲気は、愛美や里緒菜とやりとりしているような気分になる。

無意味な冗談が通じるノリが嬉しい。

駆け引きなしに、男女感がなくお互い飾らない素の内容の気がして、単純に良いなと思えた。


  心配し過ぎた?、

  なんだ、良かった

  里緒菜の言う通りじゃん

こんな風にフランクな受け答えができるなんて、友人に電話をかけて不安になる必要はなかったようだ。


《最強に暇人じゃん、じゃあ私のメールちょうど良かった?笑》

自分でも信じられない。
恐らく愛美や里緒菜だって仰天するだろう。

あの結衣がジョークでも小悪魔的雰囲気の文章を打っていたのだから、これは歴史的快挙だ。


こんな内容を数日前の彼女は絶対に送信しなかっただろうに、片思いの成長率は異常だ。


  近付けてる……?

はやとちりな恋心は、得意にならずにはいられない。