揺らぐ幻影


土曜日は友人と遊んでいるかもしれないし、

三日連続メールをするのはしつこいと欝陶しがられるかもしれないし、

何より心臓が持たないので、一日振りにメールをすることにした。


《久しぶり。もうすぐ七変化見る?》

一日振りが久しぶりになるのか不明だったのだが、こんばんわと打つのは畏まっている気がしたのでやめた。

片思いの時、自分発信のメールは一言目が難しいとつくづく思う。

呆れるくらい全く別人、自分の中の女々しい女の子が現れるから、結衣も結衣に引く。


  返事、来るかな

  お風呂かな?

たった十一分の間にあれこれ考えが止まらない。


始まったTVを見て気分を逸らそうと試みるのに、内容がちっとも入らない。

いつもは部屋で一人爆笑する喜ばしい視聴者は、

今日ばかりは上の空で近藤のことのみを考えてしまう。


  シカトかな

  だりぃって思ったかな……

地デジに間に合っていないアナログの画面には、

コンビの芸人さんがピンで面白いネタを披露している様子が映されている。


着信音に色があるならきっとピンク色をしているのだろう。

《見てる、おもろい。最高金額行くかな?》


好きな人からの何気ない言葉に、勝手にホッペを染めてしまう。


初恋が始動して最近彼女が気付いたのは、TV番組は非常に片思いに役立つということ。

同じ時間を過ごしたことのないニ人に接点はないが、

TVならば必然的に共通の話題で盛り上がることができる。

そしてドラマにしろドキュメンタリーにしろ見ている種類でお互いの趣味や思考がやや分かるため、

初対面やまだ親しくない関係の時、ちょうと結衣と近藤のような時、

間を埋める切り札として、会話の起爆剤として、ネタ提供の役割を担ってくれる上に、

好む番組の傾向から、ちらりと性格を知ることも可能だ。


  近藤くんってシュールが好き

  ……ツッコミ気質っぽい

  多分ギャグセン高い、


たかがメール、されどメール。

何も知らない彼の内側に、少しだけ触れられたような気がするのは現代っ子過ぎるだろうか?

それを大人にケータイ世代、ゆとり世代と鼻で笑われるのは承知だ。