揺らぐ幻影


昼時でもなく三時のお菓子には遅く、また晩ご飯にしては早い時間帯にもかかわらず、

店内は結衣たちの職場よりも比較的混雑していた。


「だって初待ち合わせは友達としてじゃなくて、そうじゃなく彼女としてが理想なんです!」


たまに仲間内で聞く話になるのだけれど、友人から紹介された人、

例えば中学の知人の高校の先輩、アルバイト先のツレのツレのツレ……など、つまり遠く他人と、

とりあえずボーリングやらカラオケやら遊んだりするらしい。

しかし初恋片思い組の結衣的に、初めては全て恋愛に絡めておきたいのだ。

友達としてだなんて勿体ない。


また、彼女は紹介のシステムがよく理解できなかった。

地元・年齢・趣味・服の感じ・付き合った人数・好きな曲などお決まりの質問メールを数日、

それから写メールを交換し、顔面が合格ラインなら後日会うことになる。


相手が誰でも同じパターンのやりとり。
友人の友人の繋がりの出会い、なんだか合理的で現代的だ。

けれど紹介でも二年付き合っている友人も居るし、結婚している知人も居るし、

結局はタイミングとフィーリングの奇跡で、奥が深いなと結衣は思った。


『恋人として遊びたい』

流行り歌に若者が共感する並に支持してくれると想定していたのに、「純粋だねミー」「初々しいよミー、羨ましい乙女心」と、

珍しい人種を発見したような目を向けられていたので、拍子抜けしてしまった。


  あれ……

  なに、私、変なこと言った、……?


恋愛に限り他人の意見に流され易い結衣は不安になりかけたが――

「じゃあやっぱバレンタインだね」

「高一高二の男なんかチョコ貰ったら惚れるから大丈夫だ、余裕だ」

それははやとちりで、応援してあげるという二人にほっとした。

男子はバレンタインに弱い説は有力だと言われたが、

近藤はたかがチョコで落ちるほど単純じゃないと笑い合った。



  やっぱりバレンタインなのかな

憧れだけで関係なかったイベント。
二月十四日、特別な日になるのだろうか――……と、含みを持たせようが、リアルしかない世界だとポップな展開は微妙だ。