揺らぐ幻影

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目を細めても見落としそうな小雨が降り注ぎ、気温はめっきり下がっていた。

傘をさしていると降っていない気がして、傘を閉じると鼻のてっぺんに雨粒が落ちる。


曖昧な天気に両手を空に向けて雲を見上げたり、

水溜まりが揺れるかで確かめたりを繰り返す人々が歩道を行き交う。


小規模に炭酸が舌先や喉の中で弾ける感じが気持ち良い。

すべての客層から支持される日曜日の昼間は書き入れどきなので、

ファミリーレストランの従業員はてんやわんやしていた。


「えーじゃあミーはもうすぐ洋ちゃんの彼女になる?」

「ミー、彼氏できてもシフト減らすなよ」

まるでこの先、両思いだと言われているようで照れ臭く、

結衣はマフラーを口元にあてると、目の前にいるニ人を眺めた。


前髪に黒いメッシュがあるせいか少しやんちゃな印象を受ける男と、

ゆったりした服を着こなすふんわりした印象の女は、

彼女のアルバイト先の先輩でもあり、仲良しメンバーでもある。


今日は朝シフト組の三人で仕事の後に遊ぶ約束をしていたので、

「想像付かない、ミーに彼氏……」といった具合に、お喋り会の最中だった。

ミーと言うあだ名を付けられたのは、ミスをした時に『田上ー』、

『たがみー』とミを伸ばして呼ばれていたことがきっかけだったりする。


小学校の時に雪女とからかわれて以来、小中ずっと『ユキちゃん』と慕われ続けてきたので、

ミーという愛称はかなり気に入っている結衣だ。


「全然……、まだまだ恋愛対象外ですよ私なんか、はい」

恋仲を否定しながらも、実の所かなり喜びに溢れた発言で、

そう、近藤のことを……好きな人のことを誰かに話すのは楽しいし、

自分の好きな人はこんなに素晴らしい人なのだと、たくさんの人に知ってもらえて幸せに思えてならない。


よって、恋バナと言う単語は、いつの間にか世の中に定着したのだろう。

中学校の頃は他人の恋愛話を聞こうが興味がなかったけれど、

自分のことになると一方的に語りたくてうずうずする不思議。