揺らぐ幻影


カーブした天井は高く、一定の間隔で電気がついている。

近藤となら体育館は星が輝くプラネタリウムにもなるし、花火の咲く夜空にもなる奇跡具合がギャグに素晴らしい。

3D眼鏡をしなくても、そこは都合上ロマンチックな錯覚が働くので問題ない。


体操服の後ろ姿を見送るのが今の結衣の役目だ。

恋をしていると実感できるような気がするので、ドキドキして胸が暴れる感覚が心地良い。



「あれ、結衣ちゃんイッチーと仲良し? ずるー」

紙風船にグロスが付かないよう、いくらか距離をとり空気を入れ直す奥は尋ねた。

服コの市井と言えば、イケメンの癖にあまり女子に絡まないと有名なせいか、多少なりとも違和感があったのだろう。

「全然! ラケットぶつけたから、あは」

へらへらした態度で取り繕い、結衣はなんとなくごまかした。


そう、憧れている奥にでさえ、好きな人が居るのだとは言えない。

結局、里緒菜や愛美ほど彼女を信じられないのだ。

その証拠に気付いたら否定して、更に右手を顔の前で振って主張していた。


  バレたくない……し

  絶対すぐ噂んなる


「あー、卓球そうだ、この前ん。ごっつんだったもん、あれ痛いってー」

何も疑わず同調してくれるクラスメートに嘘をついているみたいで、申し訳なく心臓が痛んだ。


  でも、

  そっとしておいてほしい、


近藤と結衣。
今の段階で仮に噂をされようものなら、ダメになる。

万が一好きだと言う気持ちが本人に伝われば、彼からすれば――ありがた迷惑になるだろう。

風聞に拒絶を示す彼を見たくもないし、間接的に振られたくなんかない。

……だからまだ愛美と里緒菜以外には言えなくて、奥に隠し事を持ってしまう。


頑張ればいい。
頑張ろうと何度も確認できるうちは、まだまだ頑張れるのだからと、

意欲に満ちた少女は再び先の読めない丸い紙風船を追いかけた。


先生や大人に叱られる声が青春の効果音だ。
迷惑料を請求されない程度のやんちゃぶりが微笑ましい世界へ、

早く好きな人を招待したいなと夢のようなことを思った。


…‥