揺らぐ幻影





「あはっ、あはは」
「やーだ笑い方きもいって」
「だって面白いんだもん、ウケる」
「あんた不気味ー」


体育は病気でも、よっぽどの理由がない限り体操服に着替えないといけない。

結衣と里緒菜はジャージを忘れたと言って制服で見学の主を伝えたため、

勤勉な体育教師をいらつかせてしまっていた。


  スポ根の決まり事なのかなー

たかが忘れ物をしただけでカッカする頭の薄いジャージ姿の男、

人事だとばかりにゆとりの象徴である彼女は視線を外した。


オレンジのボールの引力に皆の手が吸い込まれる。いい加減バスケばかりさせて何になるのだろうか。

体育館ならバレーやバトミントンだって楽しいのにと、

どのみち運動は苦手なため、どうでもいいのだが、形から入る結衣はため息をついた。



「小崎! 田上! 見学者はじっとしとけ!」

お叱りを受けるも、お気楽な性格なので今はもう授業より作戦に夢中だった。


「あははっやっばい燃えます里緒菜ちゃん」

「うちらリアルに無邪気じゃね? はは」

ふざける彼女らに体育教師が続けて二回注意しても聞かんふりをし、ミッション続行だ。

そう、女子高生が二人揃えば、大人の注意を蔑ろにして威張ってしまう不思議。

一人だとそこそこ良い子の癖に、皆と居ると何か言動が変わる謎。

卒業して数年経てば恥ずかしくなる若気の至り、

それに気付かず無敵だとばかりに振る舞うのが青春時代だ。

「楽しー」
「痩せそ!」
「フィットネスー?」
「華奢ガール目指すの結衣ちゃん」

コート中でいったりきたりの生徒は、まるで海の波打ち際のようだ。
きりがない、疲れないのかと感心する。


「結衣ちゃん、まーぜて! リオリオも」

名前を呼ばれ振り向けば、今日もバッチリ決まっているクラスメートの美女が居た。

綺麗な人が瞳に映るとなぜ景色が華やかになるのだろうか。

見た目以外にもオーラさえオシャレアイテムで操れるのだろうか。

とにかく同性目線で見惚れる美麗さには、心よりあつい拍手を送りたい。