もっと目おっきくて平行二重でさ
目力……
女子高生らしい結衣の年代は、目は大きければ大きい程カワイイという謎の定義がある。
その為、『可愛い』の二言目には、当然『目でかいよね』と、セットになっている。
平安時代もびっくりな平成に違いない。
だから毎朝マスカラを塗り重ねるし、太くアイラインを引くし、
物足りない時は付けまつ毛にだって手を出す女子たちのぱちくり目への憧れは果てしない。
たとえ大人が汚いとか下品だと言おうが、彼女たちからすればフルメイクが正装なのだから、
逆にスッピンなんて失礼な気がしてならない――となると、厚化粧は気配りの裏返し――
なんて捩曲がった美談とも言えるのかもしれない。
それでもここ最近、ナチュラルファッションが流行りのせいか、
急に黒々しさを減らした多少薄いメイクが支持される気配を見せている。
もし魔法で外見を十箇所変えてくれると言うのなら、結衣は直ぐさま改善点を挙げることができる。
猫っ毛なら良いのに……
あ、身長低く
――結衣は自信がない。
自信がないから自分の立ち位置を異様に考えてしまう。
例えば近藤洋平に告白されるような、近藤洋平が可愛いと思う女ならば、
こんな浅ましい打算などしなくていいのだろう。
中途半端な容姿に性格も良い訳でもなく、特徴もない女だからこそ、
こんなにも醜いのだろう。
私が男なら私とは付き合いたく、ない
自分を見たくなくてパタンと手帳を閉じた。
表紙にはポスカで『マドカ★MAYURI★』と言う文字が描かれている。
愛美のM、結衣のY、里緒菜のR、それが仲良しな証拠で、五百円の価値があれば良い方だろう。
黒板消しクリーナの爆音は何とかならないのだろうか。
夜中にフィルターが詰まった掃除機をかけられるくらい不愉快なノイズだと思う。
それなのに、頭の中にある嫌な思考は掻き消してくれない。
あーぁ、
進展なんかないよ
中学の時に告白されたこともあるけれど、今まで誰とも付き合ったことがない。
正直に言おう。
近藤洋平が初恋だ。
これまた可愛らしい設定なことに、呆れてはならない。



