彼女は居ないと大塚の調べで知っていたが、
本人に自ら確かめることで、彼に恋愛の目で見てもらいたかったから、
あえて結衣は分かっている答えを質問した。
小さな計算を馬鹿だと笑わないでほしい。
明らかに狙ってますという意識を主張した文章を、近藤はどう捉えたのだろうか。
嫌悪したり引いたりしていないだろうか。
今まで男子と交わしたメールの内容を深読みして気にしすぎることはなかったのに、
送信先が好きな人だと思うと、うっとうしいくらい心配になってたまらない。
恋をするとこうも思考が狂うのか、皆おかしな頭になるのだろうか。
はあ、
返事、早く……
返事……スルーしないでね
まさか部屋で一人、結衣が両指を絡めて祈りのポーズをとるなんて誰が想像しただろう。
待ち時間が永遠に感じられ、里緒菜と愛美にメールをしようかと新規作成ボタンをいじったけれど、
万が一近藤に送信するのと友人からの受信が同時だったら、
エラーメール、センターやら送信失敗やら、ややこしいことになったら困るので辛抱した。
時計を凝視し過ぎたせいで、壁に丸い残像が浮かぶ始末だ。
時間を発見した人は恋愛に悩みがあったのだろうか。
なんか、
疲れた眠い……
早起きに慣れない目を擦って、ぼんやりと結衣は一人考え事に耽っていた。
メイクをし始めると、ホッペを掻くとファンデーションが剥げるし、机に伏せると袖にファンデーションが付くし、
泣いたらファンデーションがよれるしで、だから迂闊に恋人に甘えられない。
こんなお化粧女のままだと、近藤へ無邪気に顔を擦り寄せ抱きしめてもらえないなと思う。
ある意味シビアな悩みを切り裂くように鳴り響くやかましい音に心臓が暴れる。
着信音に反応し、急いでメールを読むうちに、後三日もすれば速読が身につきそうだ。
好きな人は結衣を甘く溶かしてしまう。
丸いわっか、半分こしたい。
《リアルにドーナツ化だから笑。彼女居ない、ずっと。春から孤独。田上さんは?》
淡々とした字面なのに、特別な感情が働けば恋文に変身する不思議。



