揺らぐ幻影

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本来埃は万人から疎まれる物体だが、舞台でスポットライトを通せば飾りに思えるし、

お日様の光りに当たればキラキラな輝きがダイヤモンドのようになる。

また、床に刻まれた傷も朝日が注がれると、ピカピカとした煌めきが湖の水面のよう。


靴箱の前にあるベンチに腰をかけている里緒菜と愛美に、

昨夜から気分の良い結衣は、携帯電話を印籠のように掲げる。


登校時間の山場、会話や足音で喧しい校舎は、少しお腹に力を入れて喋らなければ聞き取りにくい。


「バイトネタだけ?」と、眉を寄せる愛美に似たような表情の里緒菜も、

「天ぷらの話? グルメレポーター?」と、なんだか残念な口調だった。


  ……あれ?

  、……なんで

自信満々に二人に見せたのは、昨夜十時から十一時半まで行った近藤とのメールのやりとりだ。

褒められると思っていたし、頑張りを認められると確信していたので、

友人二人のリアクションの薄さや、さほど喜んでいない姿は予想外で、

結衣は引き続き困惑気味だった。


あのヘタレガールが一人で文章を作成できただけでも立派ではないか。

トレンドワード・かけがえのない親友ばりの仲の癖に、なぜ喜んでくれないのだろうか。


「えー? 私頑張ったでしょ?」

結衣は縋るように目をぱちくりさせた。

メイクだって今日は近藤にメールのお礼をするつもりなので、

気合いを入れてちょっと高い付けまつ毛にした。

付けまつ毛は油断すると目頭の部分が外れてしまうので、常にグルー持参するのが女子あるあるで、

当然ポッケには七ツ道具を隠している。


横顔から見てもクルンとしたまつ毛は可愛いはずだ。

お化粧をした後は鏡を見て、正面から評価にこだわりがちだが、

実際問題なかなか面と向かって対峙する機会はない故に、出来をチェックする際は、

合わせ鏡で様々な角度から調節するのが正しいと言える。

それがメイク大好きな女子の法則だ。


自信を纏い輝ける。
近藤がときめく人になれるように励んでいる今、

薄いピンク色の携帯電話は淡い恋心そのものだというのに、

愛美と里緒菜はどうして賞賛してくれないのだろうか。