揺らぐ幻影


《天ぷらばっか揚げてる笑。セルフで安いし駅んだから忙しい。パフェ作るんだ? プロですね》

今まで会話なんて成立したことがなかったのに、画面上で確実に二人は絡んでいる。

そんな現代版な恋愛に対する人としての違和感がなくもないが、単純に嬉しい。


  凄い、うれしい

平成っ子はポータブルゲームで遊ぶばかりで、外遊びをしないなんてけしからんとか、

携帯電話とインターネットの発達で人格に難があるとか、

散々担任やら世間からゆとりの苦言を耳にしていたので、

この年代に生まれたことが複雑だったが、結衣は初めて良かったと思えた。


なぜなら、コミュニケーションツールに携帯電話があるからこそ、

正に今こうして救われる部分がある。


  ああ、だからお姉ちゃんにケータイ世代って馬鹿にされるのかな

  でも携帯があるから私 今メールしてんだもん

  ポケベルでも糸電話でもないもん

里緒菜や愛美に頼ってばかりだったが、いざとなれば自分一人でやれるらしい。

好きな人からのメールに一生懸命返信を打つのが、馬鹿らしくて尊い謎。


《揚げもの怖い、ハネるし天敵なのに凄い、尊敬。 パフェはつまみ食いする、内緒だけど。》

本当は語尾をぶりっ子みたいに、よ・ね・わ・の・っ仕立てにしたいのに、

変に気が回って削除するので、素っ気ない文章になっているような気がした。

けれど近藤に媚びたオンナと判断されたくなくて、――というか、いつも友人に送る感覚で、結局そのまま送信した。


  好きな人とメールとか

  、凄い本当……

近藤は何をしながら今メールを結衣に送ってくれているのだろうか。

どんな気持ちで受信メールを開いているのだろうか。

『この子は自分に気がある』と、自意識過剰でいいから自惚れてほしい。

お友達ではなく異性として位置づけてほしい。


液晶画面を見すぎて目の奥が痛くなったため、運動がてら黒目を動かした。

この両目を大好きな人に見つめられる女の子になりたい。


クローゼットの取っ手にかけたお財布が光る。
可愛い可愛い白いウサギの蝦蟇口財布でバレバレだが、

アピールがてら狙ったアイテムを持つのが結衣は好きだ。