「早く切って、迅速に! 速やかに直ちに! 結衣!」
姉の口頭による怒涛の催促ラッシュで、熱気を露わにされた。
握っていた子機からもしもしと声がして、口早に電話を譲ることと、
長電話に付き合ってくれたお礼と、一方的に切ることの謝罪を済ませ、
もう一度感謝の言葉を伝えてから切った。
「FAXしあうから電話譲らないからね」という姉の捨て台詞は放置して、結衣は一人不安になっていた。
……どうしよ
今晩里緒菜は親と映画のレイトショーを見に行く言っていたので、メールでの後援を願えない。
、どうしよう
一人で頑張れるかな……
決意をかためる前に、ライトがぶりっ子ピンクに光る。
夢だった個別設定の着信ライトカラーなのに、愛美との繋がりがない今は恐怖の色だ。
《土日忙しい。その分普通に時給良い。言っとくけど時給八百三十円だから。オシャレとか関係ないから笑》
少し茶目っ気のある文章に、くすりと笑みが漏れた。
メールだと実際に話す時よりも考える時間があるせいか、
慎重に推敲が可能なため、比較的気分が楽だ。
それでも戸惑い、他人ビジョンではどうでもいい内容を打つのが怖い。
《時給めっちゃ良いじゃん、いいな。どんな仕事? 私ホールだからひたすら注文か皿下げかの小間使い。たまに可憐にパフェ作り笑》
緊張し過ぎてハイになった身体は、必要以上に両手に力が入り、
このままでは携帯電話をへし折ってしまいそうだ。
頑張ろう
頑張ろう、ね
コンセントにささったほんのりとした明かりは、最近よく雑貨屋さんで見掛けるアロマポットだ。
気分でオイルを変えて楽しめるし、癒しにお金をかけると女の子しているなと実感できるので、
ミーハーな結衣は結構お気に入りだ。
また火を使わないため安全だし、何十日かすると香りがゆるくなるドラッグストアで買える芳香剤より効果的に思える。
可愛らしいインテリアを集めるのが好き。
お部屋の追求は自己満足に走るように見え、実は招いたお客さんを意識してなくもないので、
結局こだわりの目的がいまだに分からない結衣だ。



