揺らぐ幻影


ピタリと笑いを止めて、返事をどうしようかと本論を尋ねた。


愛美は彼氏持ちで里緒菜は中一以来フリーとなると、

どうしても説得力の面で今現在恋愛中の前者を頼ってしまいがちだ。


『うんっとー、うどん屋とか和風、フォーク。私はファミレス、ケーキ。飲食店一緒だねオンプ。土日忙しくないハテナ……とか?

うっわー、つまんない文章、これ駄文。英文みたいじゃんね、あはは』


ユーモアが乏しいが模写すると言って一旦子機を置き、結衣はスピーカーで会話しながら文章を作り、

添削した結果、独断でフォークとケーキと音符の絵文字は排除した。


ちまちまと指先に愛を込めて、女子高生らしい時間を堪能する。

メールなんて誰が打ったか分からないのに、どうして真剣になってしまうのだろうか。

頭のどこかで、くだらないと笑う現実的な自分が居るけれど、シビアなツッコミは聞こえないふりをする。


送信ボタンを押す瞬間の緊張ったらない。

受験発表の瞬間よりも、適当に書いた感想文を体育館で朗読させられる時よりも、

身体が狂ったみたいにドキドキして、壊れてしまいそうだ。


こんな緊張はいらないから平常心でありたいと思うのに、

本当はドキドキが心地良かったりする謎。


こんな胸の高鳴りなんて、彼に出会うまで彼女は知らなかった。

子供騙しなキャンディーばりにパチパチ弾ける様は、脳みそを刺激して気分が良い。


どうしようとはしゃぐことが、実は楽しかったりするのは片思いにありがちなことで、

この手の悩みはちっとも深刻ではない。

どうしようと相談を持ちかけ友人と語る雰囲気は、恋愛をした時の付加価値だと言える。

どうしようの無限ループが醍醐味で、どうしようと言うことが愉快なのだ。

端的に結衣の心境を読めば、ただ近藤のことを考えて空想を味わいたいだけで、ちっとも困っていやしない。


それがピークになると、夜な夜なガールズトークが開催される学生の仕組みだ。

結論のないお喋りをすることで、愛しのあの人をますます好きになる便利な作業。


好き。好きだから好き。
もっと好きになりたいから、友人に聞いてもらう夢幻に満ちた会話は、

気持ちの確認作業なのかもしれない。