いくら他人とは言え、仮にも隣のクラスなのだから、
辞書を借りたり挨拶をしたり等の偶然奇遇作戦を細々しなくとも、
こんなご時世、メールアドレスを手に入れるのは簡単だった。
友人の友人や、友人の知り合いの友人さえもメモリーに無駄に登録する昨今、
いわゆるメル友という関係になるのは容易だった。
そう、大塚やクラスメートの男子に聞けば、紹介してもらうのは簡単だった。
けれど、結衣は携帯電話を通すばかりよりも、顔を見て直接コミュニケーションをとりたい古き価値観のため、
メールのやりとりよりも、おはようと言ったり昨日何食べたかと話しかけたりする方が、
出会いに尊い意味がある気がしたのだ。
つまり、携帯電話に手助けしてもらわない方が、一秒一秒を大事にできる気がした訳だ。
『良かったじゃん、アイス屋とかクレープ屋だとさ、客もバイト仲間も女だらけで誘惑される』
テンションの高い愛美の言い分に納得した。
彼女の言う通り、アルバイト先の雰囲気によってはライバルだらけな場合もある。
イメージのみで数字で示すことは難しいのだけれど、
いわゆる可愛い職場には、上質な女スタッフが多い可能性が非常に高く、
学校では市井の件であまりちやほやされていないが、
学外だと近藤は元々かっこいい人故に、余計モテモテかもしれないのだ。
従業員のみならず、学校付近や街中だときゃぴついた客層から逆ナンされてしまいかねないので困るため、
愛美の発言に同調し、オシャレなカフェだとお姉様に誘惑されると結衣は笑った。
そして、
従業員は既婚者ばかりですように
お互いタイプじゃありませんように
お客さんはサラリーマンばっかですように
このように、彼の周りの登場人物を自分に都合が良いように設定するのが乙女心で、
愛しの彼が他の誰にも目を付けられていないようにと、祈ることしかできないから、
どうか、彼を狙っている女の子が居ませんようにと、浅ましい程に健気な本音を結衣は念じた。
思春期ならば、それなりに異性にモテないと少々どこかに問題がある疑いがあるような気がしないでもないが、
そこを流すのが恋は盲目のキュートな鉄則だ。



