夕方に閉めたはずのカーテンは少し隙間があり、部屋の中が反射して窓に映りこんでいる。
チェストの引き出しも僅かに閉まっていないし、化粧水の蓋も開きっぱなしのため、
キチっとさのない結衣のゆるい性格を、来訪者は見渡して数秒で察知してしまうであろう。
暗い空間に浮かぶ自分と目が合うか合わないかの瞬間に、そっと月明かりを遮った。
「返事スルーだよ。もう学校行くの怖い、はあ……、メールなんかするんじゃなかった。キモいって無視されたんだ……」
『待て待て、携帯依存っ子じゃないんだから待とうよ、結衣さん素晴らしくゆとりですか?』
「だって、嫌がられてたらどうしよって、胃が痛い……も、やだ。なんか、もう、や」
励ましてくれる愛美の言葉は一言目から笑わせてるフレーズを選んでくれているが、
片思い特有の被害妄想がなす悩みの沼に足をとらわれた結衣には、聞こえていやしなかった。
『早まるなって、まだ八分だから、そんなんじゃ典型的な平成生まれ――「ああーやだーもう愛美代わってよ! 携帯交換しよう? 代わりにメールしてよ」
無茶苦茶な提案をしている自覚なんてなく、ただただ不安ばかりが膨らむ。
怖い……やだな。メール削除したかな
……嫌われたくない
どうしように答えはない。不安を募らせても何も生産性はない。
つまり、ああだこうだと悲観的になることは無駄な悩みに時間を費やしていることにしかならない。
そんなことは分かっている。
なのに、どうして好きな人相手だと、大袈裟に失望して極端なものさしになるのだろうか。
頭がいかれたのかとか、クレイジーだとか、そんな言葉が今の結衣にはぴったりだ。
冷静になれば、結衣にとってはたかがメールなのだから、
いちいち女子高生らしく携帯電話をコミュニケーションの武器にしなくていいじゃないか。
彼女のように平常心でなくなる時、きっと人は好きな人のことを想っているのだろう。
ただ、恋愛が絡むと犯罪をしたり殺人をしたり、壊れてしまう心理は理解できない。
ただ、片思いと上手に付き合っていきたいと願う。



