男心が読めない自覚はある。
ただまだ十五歳なのだから、恋愛マスターになる必要はないかなと結衣は考えている。
恋愛経験豊富とか愛を知らないとか、そうじゃなく単純にこの恋を楽しみたいと願うだけだ。
「それで友達からさ、近藤くんのアドレス教えてって頼まれ――「、え、あー、あれか、田上さん、その……狙う系?」
「はあー? 違うしやめてよー! 友達に頼まれたんだってば!!」
信じられないと大塚に憤慨する結衣の様子に、
愛美と里緒菜は遠目から見守りつつも、ため息をついた。
あれではバレバレだと、リアクションのガチ感に二人は呆れた。
疑惑が広がらずに助かったのは、頼んだ相手が大塚だったからだ。
彼はあまり女慣れしていないので、後からいくらだってごまかしが効くが、
そこそこ経験がある者なら男女関係なく感づくだろうに。
それだけではない、面白半分恋に纏わる風説を広められかねないのである。
その辺の配慮をしっかり学ばせておこうと教育係は思ったのだった。
「本人に、あの、確認して送っとく、よ」
「ありがとー、さっすが大塚さま。あはは」
幸先の良さそうな展開ににこにこして、結衣は携帯電話を眺めた。
現代っ子なのだ、好きな人とメールがしたい。
その横顔にさえ左隣りの席の人が、頬を染めているなんて知らないしどうでもいい。
近藤のアドレスが入力されたなら、同じ携帯電話でも全く別物になるのだろう。
一年前の古い機種だが、甘い付加価値でたちまちプレミア急上昇間違いない。
どんなに大金をつまれても譲らないけれど。
……はあ、ドキドキする
メール、出来るのかな
デコメ絵文字男じゃありませんように
アドレス変なんじゃありませんように
小文字使わない人でありますように
まだ交換していやしないのに、段々注文が増えるのも仕方ないことだ。
付き合ったことがないせいか、細かい理想があるのだが、
結局近藤がどんなにおかしな人だとしても、惚れてしまった今、ちょっとやそっとじゃ冷めないのだけれど、
とりあえずミーハー携帯電話依存症の自己顕示欲タイプではありませんようにとだけは、最低限祈っておいた。



