揺らぐ幻影


購買から外に出ると、あまりの寒さに結衣は身震いをした。


  あーあ、

中学生の頃は男女が意識しあって一時期わざとらしい程に距離があり、

噂を立てられないようお互いが避けたりなんかして、業務連絡以外会話ゼロもざらだった。

それでも中学二年生になると、逆にそれが幼稚と気付いたのか、

ぼちぼちお喋りが増えて一緒に遊ぶようになった。


男子なんかちょっと褒めたり、ちょっと喜んだふりをして感謝をすると、

女子を優遇してくれたし、優しくしてくれた。


そんな地球を歩くと、太陽と月は思春期の男女みたいだと思った。

教室が空、気にして避ける太陽が男子、こっそり後をつけるの月が女子――微笑ましい自然なこと。


近藤に会ったことも市井に話しかけたことも子供は母親に伝えなかった。

失敗したから、恥ずかしいから、かっこわるいから、あれは秘密にした。


また頑張ればいい。

そう、都合のいい頭は嫌な事は簡単に削除して、また一からやり直せばいい。

ちっぽけな勇気を源にリベンジして近付けたなら、きっと未来は輝かしい最強女子高生になれているはずだ。



「はいお弁当」

席に着くと結衣はにこりと適当に微笑んだ。
ここ最近、誰に対しても常に笑顔だなと思いながら、他意なく愛想を振り撒いてやった。


「……わ、あの、まじで買ってくれたの? 悪い、ごめ、冗談、だったのに」

「え! 冗談だったの? 騙さないでよ、詐欺師め」

あははと笑えば、やはり真っ赤になる大塚。

彼は冬休み前あんまりパッとしないキャラだったから、

女子と話すのが慣れてないせいで、いちいちこんな中学生みたいな反応をするのだろうと結衣は呆れた。

ぎこちない異性感を目の当たりにすると、こちらが恥ずかしくなってしまう。


ひょっとすると近藤の前でもこんな感じなのだろうか――なんて、

近藤を想う自分の笑顔に大塚が頬を染めているという発想はめっきりない。

田上結衣は恋愛ビギナーだ。

男心が理解できるなら、きっと彼女は近藤ととっくの昔に付き合っているはずなので、

あながち間違いでもないだろう。
恋愛事情にド素人は、他人を不愉快にする言動をとりがちな点に、意識が働かない。