揺らぐ幻影

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お月様は満ち欠けするのに、お日様はどうしていつも丸いのだろう。

雲の流れた先は、一体どこに消えていくのだろう。

自然現象は難しいので分からない。


「まくのうちーまくのうちー」

「そもそも論、幕ノ内ってどーゆー意味〜?」

「謎すぎ。気になるコちゃんじゃん、お相撲さん、みたいな」


「そもそもどーでもいい」

「あ、そう終わらせる訳?」

「私もどうでもいいですから」

効果音にぴったり、あははと笑いながら三人は朝を迎えた学内を歩く。

彼女たちの年齢はちょうど寒いノリ・低レベルな発想が楽しくて仕方ない時代だ。

そのため、二言目にはウケると手を叩き笑っていられる平和仕立てで、

他者からすればテンションを理解できないだろうが、それが女子グループの特徴である。


ちなみに、自分たちの場合は愉快て仕方ないのに、同様のノリを違う子たちがして騒いでいたら白けるという特性もある。


登校時間にあたる購買は混雑しているので、結衣だけが中に入ることにした。

そう、大塚にお礼として幕ノ内弁当を買わなくてはならないからだ。


仲良し三人娘の象徴・お揃いのお財布をぶら下げ、彼女はお盆の新幹線乗り場並に密度の高い人波に立ち向かう。

  熱気凄……

この時期は屋外と屋内の気温差に皮膚の設定が追いつかないが、

何気に一月は言うほど寒くない、本当に寒いのは二月の終わりから三月の頭だと結衣は思う。

陽気になったと見せかけて寒波が舞い降りる天気の仕組みも詳しくは知らない。


それに最近は四月だって春らしさが皆無で、足首が冷えて異常に寒いと思う。

また、雑誌や服屋さんは春物ばかりなのに、寒いからと二月終わりにまだダウンを着るのはオシャレではないと先入観が働くせいだ。)


群がる生徒たちは、ワイドショーでたまに特集している売切御免野菜詰め放題の光景みたいに皆が必死な感じで、

そんなに購買で何を買いたいのかと少し怯む。


けれども、マドカ高校なら、下級生の女子はお得だという。