「確かにー。アンジェラ?、ふ、大塚、服コと仲良いよね」
服飾コースは男子が少ないので、そういえば春は近藤を始め隣の組のよしみか、
よくE組にF組の男子がちらほらと居た。
とはいえ男子は団体行動をしないせいか、夏休みを明けたらあまり来なくなったのだが、
今思うとあの時、彼に絡めば良かったと少し悔やむ。
勿体ないことをしたと舌打ちしたくなる。
落ちたタマゴを空のお弁当箱にしまった。
蓋に居る黄色いキャラクターがこっちを見ている。
来月あたり、――極端に暖かくなったり寒くなったり、季節の変わり目はわがままな天気だ。
セーターを春らしく白色にしようかと思ったけれど、
近藤の真似をするみたいで不気味だから諦めておいた。
そんな訳で、未知の期待にわくわくしている結衣は、早速大塚に話しかけるのだった。
「あのさっ、バイト先の子が市井くん彼女いるのかなあ〜って。ダメなら近藤くんかなぁーって」
「……――ああ、スパイしろと?」
すんなりと話しの通じる大塚は、何か考えるように眉間にシワを作った。
二重の線の目頭側が持ち上がって幅が広がる。
この人の顔はタイプでないと余裕をかますあたり、やはり自分はあまり性格がよろしくないと判断される材料になるに違いない。
「そー、おとり調査してくれたり……? 市井くん人気者だから、ほら、勘違いされたくないし?」
赤くならないように耳を引っ張ってごまかせば、
右耳に付けていたキャッチの後ろがパールのピアスが光る。
山に行けばご飯が美味しいと言うが、たとえ廊下で食べたって近藤を想えば、
賞味期限が怪しい三日前のかたくなった焼き魚さえ美味しいと思える気がした。
携帯電話に加わった大塚の文字――下の名前なんて知らなかった。
そして、彼が自分を何と登録しようが結衣には無関係で、
メモリーの数は結局人間関係においては、あてにならないと風刺めいたことをしばし悠長に考えていた。
近藤洋平――この四文字を電話帳に追加できますようにと祈るだけが、
女友達より恋愛を優先することが特技の女子高生的には、今のすべてだ。



