揺らぐ幻影




大好きなアスパラのベーコン巻きが入っていたので、単純な結衣はご機嫌だった。

お昼休みはいつものようにお喋りをしながらお弁当をつつく。

放送部の人が選んだよく分からない曲が流れる教室は、相変わらず喧しく、

恐らくほとんどの人が音楽を聴いていやしないだろう。


気の毒に思い、「この曲斬新だね」と適当に感想を述べると、

「分かる、気になる」「第六感に響くね」と、口先だけのノリで愛美と里緒菜が言ってひと笑い。

結局、爆笑する三人のせいで掻き消されたBGMに耳を傾けていた人は舌打ちしたことだろう。

居ないのかもしれないけれど。


料理上手とは呼べない母親は、味はイマイチにしろ、高カロリーにならないようにと栄養のバランスを考え、

また赤緑黄色、黒白茶の彩りを気にして詰めてくれているので感謝している。

  醤油辛っ! 塩分っ


キャラ弁という食べ物に創意工夫を凝らしたお弁当が流行っているらしいけれど、

ミーハーな癖に結衣はあまり興味がなかった。

あれはどうも、彼女の思想回路では自己顕示欲に似ていると思わなくもないのだ。


もちろん、熱心なママが可愛いお弁当を作ってくれたら嬉しいに決まっているも、

見た目が悪くてマズかろうが、何でも美味しいと言える人でありたいとまた思うためだ。


お料理はそういうものだと勝手に決めている。

誰かが作ってくれた食べ物は愛情をダイレクトに表現してくるせいか、なんだか照れ臭い幸せな気持ちになれる。


  でも近藤くんと付き合ったらキャラ弁作ってあげたいなー

  かわいーでしょっていちゃいちゃ……
  月曜はお弁当デーみたいな

  王道バカップル〜

たちまち広がるぽわぽわしたお花畑の世界では、

桜の木の下でキツネをあしらったキャラ弁を広げ、近藤とお花見をしている自分がいた。

……もしも妄想が筒抜けなら、きっと老若男女から引かれているに違いない。

なぜならトリップ後に本人でも若干不気味だと感じることが多々あるからだ。