そんな女子高生。
結衣たちが購入した動機はいかにキャピつけるかで、
おてんばな女の子らしさをアピールすることが目的なんだとか。
幼稚なら幼稚なほど、『テヘッ』に達するらしく、
一つ例を挙げるなら、ぬいぐるみをわざと教室後ろのロッカー上に置いて、男子にイジってもらえられたら完璧なようだ。
カワイイでしょがイタいで終わりはなく、あくまで異性に茶化されたらオイシイんだとか。
好きな人のかっこよさには慣れないが、緊張する身体にはいくらか慣れたらしく、
だから渡り廊下を歩く近藤に「おはよう」と、すんなり言えた。
自分でもびっくりだ。
ついこの間まで友人の横を黙って歩くしかできなかったというのに、恋の振り幅は果てしない。
ウェーブがゆるくなった髪はパーマをし直したのか、
寝癖を思わせるニュアンスヘアは以前より綺麗に根本からふんわりとしていた。
少し周りを見渡してから、自分に投げられたと気付いたらしい少年は、「……はよ」と口を開いた。
クラスメートだとか友人の友人だとか、その手の肩書がない女子生徒からの挨拶なので、
少しぎこちない声色なのは当たり前のリアクションだと、
自身のポジションを承知しているが、やっぱり単純に悲しい。
結衣が足を引いてこの場を去ろうとした時、追いかけるように『田上さんおはよう』と、
市井が毎度お馴染みの犯罪級の笑顔を作る。
そして二秒の空白があってから二人は教室に足を進め、残るのは背中だった。
すき……
わざと後頭部に向かって愛を告げた。
そのまま脳みそまで浸透して届けばいいのにと思いながら、ただただ見つめた。
襟足が不快感がない程度に許せるオシャレ範囲で長いため、肩甲骨の上あたりにふわふわした毛先が歩く度に踊っている。
自分が猫ならば、あっという間に髪の毛を掴んでいるのにと思う結衣が、
まだ本格的なストーカーになるのは早いと衝動を堪えたのは、里緒菜と愛美には秘密だ。
それでも好きだという気持ちが増える一方。
ああ、なんて夢見る思考なのだろう。
片思いはドン引きする感情ばかりなのだと初めて知った。



