揺らぐ幻影


片思いは相手の思考が読めないので、誰だって悪い方向に考えがちになるものだ。

いい意味で勘違いをして痛いくらいポジティブになればいい。


つまりこの場合、近藤は隣のクラスのまあまあ可愛い女子に話しかけてもらってラッキーと思ったに違いない、

あの子は頬を赤くしていたし、俺ってばモテるかもしれないと気を良くしたに違いない、

……といった具合に都合よく解釈すればいい。

そうしたら、たちまち初恋に素直な乙女とその仲間たちは笑顔になれるのだ。


  そだよ、

  単純が幸せじゃん

マイナス思考になるのは悲劇のヒロインになりたいからで、

誰かに『どうしたの?』と言ってほしいからで、皆に大丈夫だと確認したいからで、

悲観的になるのは、可哀相な自分を演出して構ってほしいからだろう。

恋愛で切ないと悩む女は自己愛女――それが高校生が編み出した心理学もどきだ。


  喜んでくれたよガムは

  話したことに変わりなし!

プラス思考になれば、些細なことがありがたくてハッピーではないか。

大嫌いな英単語だって調子よく使えるなんて素晴らしい変化だ。

快調、快調。エセ努力家であればいい。


「おかあさーん」

気持ち口角を上げ、結衣は愛美と里緒菜に手を広げたのに、

即効で「やだよ子持ちとか」と、突っ込まれ、ポイントが謎な笑いが生まれる。

馬鹿みたいに爆笑しあえる仲でいられるのは、正にポジティブ思考の恩恵だ。

それを教えてくれたのは間違いなく二人、いつだって恋を動かす源は大好きな親友だ。


――なんて道徳の教科書ばりに感謝をしても、結衣はそれを口には出さず、胸に大切にしまう女の子だ。

自分語りをしたり、互いを高め合うアツい友情よりは、

こんな風に気楽にネタを共有する関係でいたいと思う彼女は、

世間で言われる女子高生像と価値観がズレているのかとたまに思ったりもするが、

深いこと考えるのは煩わしいので、幸せならOKだと結論づけた。


お気楽な子が近藤のタイプなら、

自分ほど見合う人間はいないはずだと冗談をかませるくらい少しゆとりが持てたのも、また愛美と里緒菜のお陰だと、

純愛マニアの女子高生らしくこじつけてみよう。